Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
人口の高齢化に伴い,わが国の脊椎手術は高齢化の一途を辿っている.日本脊椎脊髄病学会レジストリー(JSSR-DB)年次報告によれば,2023年度の脊椎脊髄手術症例184,134例の平均年齢は67.2歳に達しており,全患者に占める70歳以上の割合も半数を超えている14).すなわち,現代の脊椎脊髄疾患診療は「高齢者医療」そのものであるといっても過言ではない.
高齢者脊椎手術において良好な術後転帰を得るためには,周術期における併存症管理が不可欠であるが,中でも骨粗鬆症は最重要疾患である.骨脆弱性はインプラントの固定力低下を招き,スクリューの緩み,矯正損失,隣接椎間障害,偽関節といった深刻な合併症を引き起こす2,20).これらはしばしば再手術や追加手術を余儀なくさせ,術後のactivities of daily living(ADL)を著しく低下させる「予後的損失」を招くだけでなく,再入院や長期療養に伴う多大な「経済的損失」を患者と社会の双方にもたらす10,15).
わが国の骨粗鬆症有病者数は1,590万人と推定されており,70歳以上の女性における有病率は約4割に上る24).そして,脊椎疾患に起因して活動性が低下している脊椎手術患者集団では,この頻度はさらに高まることが予想される.しかしその一方で,臨床現場における術前評価の現状は危機的であり,65歳以上の脊椎固定術患者においてさえ,術前に骨密度検査(dual-energy X-ray absorptiometry:DXA)が行われているのは4人に1人に過ぎないという報告もあり23),脊椎外科医の意識と実臨床の間にはいまだに大きな乖離が存在している.
術前に患者個々の骨強度を正確に把握し,それに基づいた治療戦略を立てることは,合併症を未然に防ぎ,高齢患者の健康寿命を延伸させるための脊椎外科医の責務である.本稿では,こうした背景を踏まえ,2025年に10年ぶりに改訂された『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』に沿って9),高齢者脊椎手術患者における骨強度評価について概説する.

Copyright © 2026, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.

