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はじめに
骨粗鬆症性脊柱障害は,高齢者において椎体骨折や脊柱変形をきたし,慢性的な疼痛,姿勢異常,ならびに日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下を引き起こす重要な病態である11,23).特に高齢化が急速に進行するわが国においては,その罹患率および社会的影響は年々増大しており,整形外科・脊椎外科領域における重要な課題となっている11,23).骨粗鬆症性脊柱障害は,要介護状態の増加や医療・介護費の増大とも関連し,個々の患者のQOLのみならず,社会保障制度に対する影響も大きい.われわれが行った一般住民コホート研究では,脊椎椎体骨折が腰痛および腰痛関連ADL障害と有意に関連し,椎体骨折と骨粗鬆症が歩行速度や椅子立ち上がり時間などの身体機能にも独立して悪影響を及ぼす一方で,骨粗鬆症単独では腰痛やOswestry Disability Index(ODI)とは関連しないことが示された14).このことは,骨粗鬆症性脊柱障害の臨床像が単なる骨密度低下ではなく,椎体骨折や脊柱変形を介した運動機能低下と密接に関連することを示している.
これまで骨粗鬆症性脊柱障害の病態理解や治療戦略は,主として骨密度,椎体骨折の形態,脊柱アライメント異常など,骨格系の評価を中心に検討されてきた.骨密度測定やX線に基づく評価は,骨粗鬆症の診断や骨折危険性の層別化に有用であり,薬物療法の適応決定や治療効果判定にも広く用いられている.一方で,骨密度や画像所見が類似しているにもかかわらず,疼痛の遷延,保存療法への反応性,機能回復の程度,さらには手術成績に大きな個人差が認められる例が少なくないことも日常診療で経験される11,23).同程度の圧潰や後弯変形であっても,立位保持が困難な例と,自立歩行を維持している例が混在する状況は決してまれではない.これらの臨床経験は,骨の脆弱性のみでは骨粗鬆症性脊柱障害の臨床像を十分に説明できない可能性を示唆している.
近年,この背景因子として,サルコペニア・フレイルといった加齢関連病態の関与が注目されている1,3,4,9,21).筋量・筋力の低下は,脊柱支持機能や姿勢保持能の低下を介して脊柱障害の進行に影響を及ぼすのみならず,保存療法の不成功,転倒や再骨折のリスク増大,さらには手術後の機能回復遅延とも関連する可能性がある12,15).さらに,栄養状態や身体活動量の低下,併存疾患などが複合的に影響し,「骨粗鬆症+サルコペニア+フレイル」という全身性病態として骨粗鬆症性脊柱障害を捉える必要性が指摘されている.本稿では,骨粗鬆症性脊柱障害におけるサルコペニア・フレイルの病態的意義を概説し,診断段階で何を評価すべきかについて臨床的観点から述べる.

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