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はじめに
脳脊髄液漏出症とは,脳脊髄液腔から髄液が持続的または断続的に漏出することにより髄液量が減少し,頭痛,頸部痛,めまい,耳鳴,倦怠感など多彩な症状を呈する疾患である.2016年4月には硬膜外自家血パッチ(epidural blood patch:EBP)が保険収載され,2019年12月には『脳脊髄液漏出症診療指針』5)(以下,診療指針)が刊行されるなど,本疾患の診断と治療体系は大きく前進した.
しかし,小児における脳脊髄液漏出症については,発症機序,臨床像,画像診断所見,治療反応性など多くの点がいまだ明らかでなく,現行の診療指針は主として成人例を中心に構築されており,そのまま小児へ適用できるかどうかは十分に検証されていない11).また,小児例の報告数は成人に比べて少なく,典型的な起立性頭痛が不明瞭であることが多いこと,片頭痛・起立性調節障害・心因性の症状として扱われ診断が遅延することも大きな課題である.さらに,放射線被曝の問題から,成人と同等の画像検査が容易に実施できない点も小児特有の制約である4).
こうした背景のもと,本邦では日本医療研究開発機構(AMED)研究班による「脳脊髄液減少症の非典型例および小児例の診断・治療法開拓に関する研究」4)が実施され,非典型例および小児例の病態・診断・治療に関する知見が整理された.小児例に関する解析では,小児期発症の脳脊髄液減少症が一定数存在すること,主症状として頭痛・倦怠感が多く,不登校や学業遂行困難の背景となり得ることが示された.さらに,スポーツ活動や学校生活に関連する軽微な外傷が誘因となる例が少なくないこと,また画像診断における被曝の問題も明らかとなった.治療に関しては,保存療法で改善する例がある一方,症状が持続する場合にはEBPが成人以上の治療効果を示す可能性が報告されている.
以上のように,小児脳脊髄液漏出症は成人例と異なる臨床的特性および検査上の制約を有し,診断・治療体系の確立が求められている.本稿では,小児脳脊髄液漏出症の臨床像および画像診断の特徴を概説するとともに,当院で実施している検査ならびに治療の実際を提示し,今後の課題と展望について述べる.

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