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はじめに
小児脊髄髄内腫瘍はきわめて希少な疾患である.脊髄実質内に発生する脊髄髄内腫瘍自体がそもそもまれな腫瘍群であり,同じ中枢神経腫瘍である脳腫瘍と比較しても脊髄髄内腫瘍の頻度は少ない.それでも,成人の脊髄髄内腫瘍についてはある程度まとまった症例数の報告は散見される.一方で,小児においては髄外のものを合わせても脊髄腫瘍は全中枢神経腫瘍の1〜10%に満たず18),全年代の脊髄髄内腫瘍においても10%以下と報告されている27).小児脊髄髄内腫瘍に関しては,その希少性ゆえにほとんどは小規模の症例集積の報告に留まり,今までにまとまった報告はかなり少ないため,治療方針の確立には限界がある.特に日本語文献に関しては,渉猟する限り,現時点で「小児の脊髄髄内腫瘍」を単独のテーマとした総説は見当たらない.そのような状況であるため,小児の脊髄髄内腫瘍における疫学はいまだ不明な部分が多い.明確に言及できることは,腫瘍の種類や頻度,病態が成人とまったく同様ではないという点と,神経発達や脊柱の成長への配慮を要するという点のみである.加えて,小児の脊髄髄内腫瘍では成人よりさらに希少な組織型も存在するために,診断および治療方針の決定に難渋することがある.
小児は一様に非成人と定義されることもあるが,新生児,乳児から幼児,学童,思春期とさまざまな成長過程がある.それぞれが同じ状況とはいえないために,小児のどの年代を対象としているのかが重要となる.さらに,成人の脊髄髄内腫瘍における治療方法や効果が小児のそれぞれの年代で同等なのかについても依然として不明であり,年代ごとに重視すべき点は少しずつ異なる.近年では,adolescent and young adult(AYA世代)における腫瘍の治療における特別な管理・留意点などが強調されるようになってきており,小児においても同様にこれにならうような各年代に応じたマネジメントの特徴があると考えられる.脊髄髄内腫瘍においては,術後の神経機能に必ず影響が及ぶとともに生命予後に関係する側面があるため,余命の長い小児においては特に慎重な対応が必要となる.
近年,本邦の多施設レジストリ解析および単施設後方視的研究のエビデンスからも,小児と成人では腫瘍分布,臨床症状,予後に顕著な差があることが明らかとなってきており,小児特有の診断・治療戦略の必要性が示唆されている.小児の脊髄腫瘍といえば脊髄脂肪腫などが代表的であるが,これは髄外,非腫瘍性病変である.本稿ではより馴染みが薄い脊髄髄内腫瘍に限定して,小児における臨床像,病理組織学的分布の特徴,外科的治療などについて,成人との比較を含めて概説する.

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