Japanese
English
特集 椎骨動脈を極める
頸椎外傷における椎骨動脈マネジメント
Vertebral Artery Management in Cervical Spine Injury
鈴木 晋介
1,2
,
梶谷 卓未
2
,
佐藤 健一
2
,
江面 正幸
2
Shinsuke SUZUKI
1,2
,
Takumi KAJITANI
2
,
Kenichi SATO
2
,
Masayuki EZURA
2
1仙台東脳神経外科病院脳神経外科
2国立病院機構仙台医療センター脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Sendai East Neurosurgical Hospital
キーワード:
頸椎外傷
,
cervical spine injury
,
椎骨動脈損傷
,
vertebral artery injury
,
急性期治療
,
acute stage treatment
Keyword:
頸椎外傷
,
cervical spine injury
,
椎骨動脈損傷
,
vertebral artery injury
,
急性期治療
,
acute stage treatment
pp.263-274
発行日 2025年4月25日
Published Date 2025/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091444120380050263
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この症例をどうするか? この時点で脳梗塞はない
図 1は某大学脳神経外科で救急対応した症例である.C4/5脱臼に伴う脊髄損傷症例〔ASIA Impairment Scale(AIS) B〕である.CTAにて脱臼による優位側の左椎骨動脈の著明な狭窄を認める.右椎骨動脈は後下小脳動脈のあたりで途切れていた.頭部CT上では脳梗塞なし.この時点で何をすべきだろうか.
①すぐに手術する.
②保存的に治療する.
③血管内治療にて左椎骨動脈の予防的塞栓術を行う.
④ヘパリン化を行う.
⑤頭蓋直達牽引を行う.
筆者の答えは①と⑤になる.この症例の経過は,頸椎MRIとCTA精査を行った後に整形外科に連絡したところ,当日の手術は難しいとされ翌日に頸椎後方固定手術を行う方針となった.ICUに入院し,待機していた深夜帯に心肺停止,Japan Coma Scale(JCS)300となり,直ちに心肺蘇生し約2分後に心拍再開したが,その後は深昏睡,四肢麻痺,両側瞳孔散大の状態が続き不帰の転帰を辿った.待機中に延髄を含む脳幹梗塞を発症したものと考えられる.この画像は担当主治医と主任教授の許可を得て掲載させていただいた.この症例のさらなる詳細は述べられないが,直ちに頸椎脱臼整復手術を行うにしても,まず先に頭蓋直達牽引を行い脳血流病態を安定させる必要があるだろうと思われる.最近話題にならないが,頭蓋直達牽引は再考するべき手技であり,これは本稿の最後に考察したい.

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