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English
特集 これだけは避けたい! 脊椎脊髄手術の重篤な合併症とその対策
腰椎後方椎間板摘出における大血管損傷
Vascular Injury during Posterior Lumbar Discectomy
小西 宏昭
1
,
奥平 毅
1
,
山口 貴之
1
Hiroaki KONISHI
1
,
Tsuyoshi OKUDAIRA
1
,
Takayuki YAMAGUCHI
1
1佐世保中央病院整形外科
1Department of Orthopedic Surgery, Sasebo Chuo Hospital
キーワード:
大血管損傷
,
major vascular injury
,
腰椎椎間板ヘルニア
,
lumbar disc herniation
,
腰椎後方椎間板的手術の重大合併症
,
serious complication during lumbar posterior discectomy
Keyword:
大血管損傷
,
major vascular injury
,
腰椎椎間板ヘルニア
,
lumbar disc herniation
,
腰椎後方椎間板的手術の重大合併症
,
serious complication during lumbar posterior discectomy
pp.163-167
発行日 2025年2月25日
Published Date 2025/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091444120380030163
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はじめに
腰椎椎間板ヘルニアに対する後方手術は,脊椎手術の中でも最も頻度の高い術式である.顕微鏡下であれ,内視鏡下であれ,絶対に避けなければならない合併症は前方大血管損傷である.すべての術者は,その存在を認識していると思われるが,自らが当事者となることは想定していない.発生頻度に関しては1%未満とされているが,重大事故として対処されていることから手術登録や合併症調査に記載されていないケースが想定され,実際には散見される事象といえる.腰椎椎間板ヘルニアに対する後方手術の実施施設は多岐にわたり,小規模医療機関やへき地の医療機関でも多く行われ,一般的な患者像としても,高いactivities of daily living(ADL)を維持している患者が多くを占める.早期の就労や日常生活への復帰を望む場合が多く,手術の危険性については認識が少ない場合が多い.
死亡例では,事故調査委員会が開かれ,係争になる場合が多く,医療機関の体制やインフォームドコンセントのあり方が問われる.血管外科からの報告では,救命された例が多いが,血管外科医や血管処置に習熟した医師が必ずしも当該施設に在籍しているとは限らない.むしろ在籍していない施設が圧倒的多数を占める.
本邦での救命率の実態は明らかではないが,生命の危険性が高いことは事実である.それぞれの医療機関が,このきわめて危険性の高い事象にどのように対処するかをあらかじめ検討しておくことが重要である.

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