書評
解剖学カラーアトラス 第9版
佐々木 哲也
1
1筑波大学・解剖学・神経科学
pp.183-184
発行日 2026年2月25日
Published Date 2026/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330610020183
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解剖学教育において,実際の人体構造の理解を深めることは,単なる知識の暗記にとどまらず,医療人としての思考の出発点を形づくるものである.その意味で,J. W. Rohen,横地千仭,E. Lütjen-Drecollによる『解剖学カラーアトラス』は,初版から40年近くにわたり,解剖学教育における視覚教材の「実物に最も近い」アプローチを提供してきた.“Photographic Atlas of Anatomy”は世界23カ国に翻訳され,解剖を学ぶ者にとってバイブル的存在になっている.第9版は,その集大成ともいえる完成度をもって,医学教育の現場に新たなスタンダードを提示している.
本書の最大の特徴は,何よりもリアリズムに裏打ちされた高精細な解剖標本写真である.これらの写真は,単に「きれいな画像」であることを目的としていない.現実の実習室でみられる組織の複雑さ,構造の重なり,組織間の自然な位置関係といった三次元情報を忠実に写し取っており,学生にとっては実習前後の「視覚的な予習・復習ツール」として極めて有用である.さらに,CTやMRIなどの医用画像も多数収録されており,実際の診療に必要な構造認識を橋渡しする仕組みが整えられている.多くの解剖学アトラスはイラストやCGで構成されており,実習書や教科書と併用して勉強するには理解しやすい.しかし,解剖実習室において,剖出作業をしながら解剖学的構造を検討するには,本書の「実物に最も近い」写真が大変有用である.

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