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書評「「解剖学カラーアトラス」第3版」
亀田 芙子
pp.910
発行日 1994年8月25日
Published Date 1994/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105882
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従来出版されている解剖学図譜は描画により半模型的に表現されたものが大部分であるが,Erlangen-Nürnberg大学名誉教授のJ.W.Rohen博士と神奈川歯科大学名誉教授の横地千仭博士の共著による本書は,実物の解剖標本を写真によって示した人体解剖学アトラスである.解剖学用語は日本語と英語で記載されている.初版は1985年に出版されているが,今回更に多数の標本写真と挿図が追加され早くも第3版が出版されたことは,本書が解剖学図譜として優れ,多数の医学部・歯学部学生に使用されていることを証拠立てるものであろう.
書評を依頼されたため本書を注意深く拝見し,また他の多くの解剖学図譜と内容を比較した結果,この本の素晴らしさに驚くと同時に,北里大学で学生が指定している図譜のほかにこの本を解剖実習室に持ち込み勉強する理由が理解できた.肉眼解剖学の教育に携わる者としてこのような貴重な解剖学図譜が出版されたことを大変ありがたく思う.序文の中に“標本は説明がなくてもそれ自体でわかるように努力した”と書かれ,著者の標本作製における自信のほどがうかがえるが,事実極めて解剖標本において目的事項が剖出されており,それが高品質のカラー写真で見事に呈示されている.解剖標本をこれだけ完壁にわかりやすく剖出しようとすると大変な労力が必要である.また,現在の解剖学用語に挙げられているものはほとんど網羅され呈示されているため,この図譜を完成させるためにはおびただしい数の解剖体を必要としたと考えられる.長年にわたり肉眼解剖学に全力を尽くされた著者の姿勢が拝察される.
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