書評
解剖学カラーアトラス 第9版
大塚 愛二
1
1環太平洋大学・体育学部健康科学科/メディカルセンター
pp.1059
発行日 2023年8月25日
Published Date 2023/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202761
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「ローエン&横地」の愛称で親しまれる『解剖学カラーアトラス』が7年ぶりに改訂され,第9版が出版された.これまでも解剖実習室でよく使われてきた人体解剖アトラスである.このアトラスの最大の特長は,初版以来変わらず,精密に解剖された人体解剖標本を極めてクリアに撮影した写真にある.ここまで精緻に剖出するためには,高度な技術に裏付けられた多大な労力と時間を費やしているはずで,写真による解剖アトラスとして他の追随を許さない.
通常の解剖アトラスは,伝統的な手描きの解剖図または近年主流となったコンピュータグラフィックス(CG)である.これらは理解しやすく,立体感のあるものも多い.基本的に著者の意図に沿って描かれていて,一般的な教科書の記載とマッチしていてわかりやすい.しかしながら,時に小さいものや細いものも多少強調されて大きく太く描かれている場合がある.これは,理解するためにはよいのだが,解剖実習でどのようなものを目印にして剖出すればいいのかを見当づけるためには,時として混乱を招くこともある.一方,写真は著者の意図とは無関係に,そこに存在するものをそのままのサイズ感で写し出す.細い神経は細く,太いものは太く写る.学習者は,解剖実習のときにどの程度の大きさのものをどこで探せばよいのかをあらかじめイメージできる.
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