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あとがき
河野 博隆
pp.1000
発行日 2025年8月25日
Published Date 2025/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330600081000
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本号の特集は滋賀医科大学 今井晋二教授が企画された「人工肩関節置換術の進歩」です.肩関節は,人体で最も可動域の大きい関節であり,思ったところに手を移動するという上肢の機能に欠かせない関節です.本特集には,頻度が高まっている人工肩関節の発展の歴史と最新の知見が盛り込まれています.
関節鏡技術の発達によって,多くの肩関節疾患の治療が低侵襲で可能となってきたと同時に最終的な手段としての人工肩関節の重要性も高まってきています.これまでの人工関節は「整形外科」の名のとおり,変形した関節の機能を取り戻すため,少なくとも表面の形状は解剖的な形状を取り戻すのがあたりまえと思われてきました.2014年にわが国に導入されたリバース型人工肩関節は,まさに画期的な逆転の発想から生み出されました.「解剖的形状を再建」することなく,残された機能を活かして「関節機能を再建」する手法は,進化を積み重ねた生物の構造を設計し直すような人体改造ともいえます.10年が経過し,生体力学的な検討が積み重ねられ,慎重な導入が進められる中で症例経験が蓄積されたことで,肩関節外科領域の新たな選択肢としての地位を確立したといえます.ぜひ本特集で,発展が著しい人工肩関節の最先端に触れていただきたいと思います.

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