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はじめに
欧米では20年以上前から上肢再建外科分野で手術支援用ロボットが導入され,数多くの臨床成績が報告されてきた.2020年に入り,本邦でもようやく医工連携でのマイクロ手術に特化した手術支援ロボットの開発がスタートした.これまで欧米で報告されているロボット支援下マイクロ手術の有効性の多くが内視鏡下で行うマイクロ手術の有効性のみで,微小血管吻合,神経縫合,リンパ管吻合などの繊細なマイクロ手術での有効性の報告は示されていない1).背景として,現存する手術用ロボットが腹腔鏡などの内視鏡手術用に開発されたため,微細な手術手技を持つマイクロサージャンの手の動きを再現できていないこと,マイクロ手術の際に必要と考えられているハプティックフィードバック(標的臓器の触覚)が現存する手術用ロボットでは得られないこと,従来のマイクロ手術と異なる姿勢で手術を行わざるを得ないことなどが考えられる2).2020年以降の開発のターゲットは顕微鏡下手術の中でも1mm以下の極細血管の吻合や毛細血管並みのリンパ管吻合を目的としたスーパーマイクロサージャリーに特化したマイクロサージャリー専用ロボットが中心となり,このコンセプトこそが上肢再建外科分野のbreakthroughとなってくると考えている.
本稿では本邦のいくつかの大学や企業で進んでいるマイクロ用ロボット開発の現状と,全世界で既に臨床応用されているマイクロ用ロボットの性能を報告するとともに,われわれが2019年から医工連携で行っているプロジェクトである「力覚のあるスーパーマイクロ用手術支援ロボットの開発」の現状を報告する.最後に,スーパーマイクロ用ロボットを開発し臨床現場へ導入するのであれば,どのような適応疾患があるのか,どのような使用用途での導入が可能かに関して報告する.
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