性格変化を伴う前頭葉症状を呈した神経核内封入体病（NIID）の1例

A Case of Neuronal Intranuclear Inclusion Disease (NIID) Presenting Frontal Symptoms with Personality Changes

はじめに

　神経核内封入体病（neuronal intranuclear inclusion disease：NIID）は，神経組織や一般臓器の細胞核内に形成される好酸性封入体を特徴とする進行性の神経変性疾患である。2011年に皮膚生検で組織診断が可能となり，2019年にNOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート伸長が原因であると明らかにされ，遺伝子解析による生前診断も可能となった。頭部MRIでは白質脳症を呈し，拡散強調画像（DWI）における皮髄境界の線状高信号が特徴的である。幅広い年代で発症するが，成人発症では，認知機能低下，末梢神経障害，四肢筋力低下が多く，時に亜急性脳炎様症状，失調，けいれんなどの多彩な臨床像を呈することが知られている。

　今回，前頭葉症状に由来すると思われる性格変化を40代で来し，その後記憶障害やけいれんを呈したNIIDの1例を経験したので報告する。なお，本症例の報告に際して，本人および家族から同意を得て，匿名性に配慮して論旨に影響がない範囲で改変した。