双極症—疾患概念の変遷から併存症，認知症への移行などわかってきたこと

Bipolar Disorder : From the Viewpoint of Changes in Disease Concept, Comorbidities, and Conversion to Dementia

抄録

　Kraepelinは早発痴呆と躁うつ病を記載し，さらに躁うつ病の基底状態を記載した。その後，Akiskalが登場し，基底状態を抑うつ気質，発揚気質，焦燥気質，循環気質，不安気質の5つから成る「感情気質」とし，うつ病と双極症の中間領域としての双極スペクトラムを提唱した。その後の研究により，発揚気質やその次に循環気質と焦燥気質が双極症Ⅰ型と関連しており，循環気質は双極症Ⅱ型と関連しており，抑うつ気質や不安気質はうつ病と関連していることが報告された。最近，双極症と注意欠如多動症（ADHD）の併存が注目を浴びているが，双極症の亜型として神経発達表現型（NDP）が想定され，双極症患者におけるNDP load scoreとADHDのpolygenic risk scoreは有意な正の相関を示し，双極症とADHDの遺伝子や病態生理に共通点があることが示唆された。また，双極症から認知症への移行も問題になっているが，両者の病態生理の共通点として，グリコーゲン合成酵素キナーゼ3（GSK-3）や脳内炎症，神経新生の低下や脳由来神経栄養因子（BDNF）の低下などが知られており，いずれもリチウムが治療的に作用する。