最近の統合失調症は変わったのか？

Has Schizophrenia Changed Recently?

抄録

　最近の臨床現場において統合失調症をあまり見かけなくなった状況について，社会環境の変化を含め総合的に俯瞰した。統合失調症の診断では，国際疾病分類第11版（ICD-11）改訂において大分類基準の拡大，疾患概念の廃止，分類の簡素化，生活機能低下を包含しないなどの変化がみられている。最近の初発例では，大学生の初診例における統合失調症の割合が減少しており，発症例の減少とともに軽症化による生活支障の軽減も考えられる。疫学でも発症者数や有病率の減少が指摘され，2019年には全世界の統合失調症有病率が0.29%との報告もある。臨床現場でも統合失調症の初診患者の病態が30年前とは大きく異なり，軽症化のイメージが強い。軽症化の要因としては，統合失調症への病名変更や薬物療法の向上などがあるが，社会背景では，社会での情報量増加から価値観に多様性が生じ，宗教観や社会帰属意識などの従来の社会・文化面での固定観念の絶対性が崩れた要因も大きい。