増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法
Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査
双極症及び関連症群
双極性障害(双極症)及び関連障害群の評価尺度・検査—YMRS,HAM-D,気分安定薬のTDM
寺尾 岳
1
1大分大学精神神経医学講座
キーワード:
双極性障害
,
双極症
,
bipolar disorder
,
ヤング躁病評価尺度
,
Young Mania Rating Scale
,
YMRS
,
ハミルトンうつ病評価尺度
,
Hamilton Depression Rating Scale
,
HAM-D
,
TDM
,
therapeutic drug monitoring
,
リチウム
,
lithium
,
バルプロ酸
,
valproate
,
カルバマゼピン
,
carbamazepine
,
ラモトリギン
,
lamotrigine
Keyword:
双極性障害
,
双極症
,
bipolar disorder
,
ヤング躁病評価尺度
,
Young Mania Rating Scale
,
YMRS
,
ハミルトンうつ病評価尺度
,
Hamilton Depression Rating Scale
,
HAM-D
,
TDM
,
therapeutic drug monitoring
,
リチウム
,
lithium
,
バルプロ酸
,
valproate
,
カルバマゼピン
,
carbamazepine
,
ラモトリギン
,
lamotrigine
pp.531-536
発行日 2024年5月15日
Published Date 2024/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207262
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概念・病態
双極性障害(双極症:bipolar disorder)は慢性に経過する精神疾患の一群であり,これには双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害がある。双極Ⅰ型障害には躁病エピソードがあり,生涯有病率は0.6〜1.0%である。双極Ⅱ型障害には軽躁エピソードと抑うつエピソードがあり,生涯有病率は0.4〜1.1%とされているが1),筆者の考えるところ,実際にはもっと多く,うつ病と誤診されている症例も少なくない。双極性障害の70%以上が25歳以前に発症するため1),児童思春期発症のうつ病には,その後の人生において双極性障害と診断変更される症例がしばしばあり,これらは双極性障害に診断変更された時点からうつ病であった時期を振り返ると,その時期は潜在性双極性うつ病であったとも言える2)。
双極性障害の患者は心理社会的機能が低下するのみならず,10〜20年早死にすると言われるが,これには心血管疾患による死亡や自殺が関与している1)。以前,「タイプA行動パターン」という,せっかちで精力的な行動パターンの人が出世はするも人生半ばにして心筋梗塞で亡くなりやすい,ということが指摘された。筆者が考えるところ,タイプA行動パターンの背景にある発揚気質が双極性障害の病前気質でもあるために,双極性障害の死因としての心筋梗塞を,当時はタイプA行動パターンの死因として扱っていたのかもしれない。
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