増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅱ併存症をもつ患者の評価とその術前・術後管理
内分泌・代謝疾患
ステロイド投与例
平野 佑樹
1
,
板野 理
1
Yuki HIRANO
1
1国際医療福祉大学成田病院消化器外科
pp.73-74
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110073
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周術期ステロイドカバー
健常者では手術や感染などのストレスにさらされると視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)が活性化され,副腎皮質ホルモンであるコルチゾール(ヒドロコルチゾン)の分泌量が増える.メジャー手術ではコルチゾールの分泌量は75〜150 mg/日(通常時の約10倍)まで増え,術後24〜72時間でベースラインに戻る.
ステロイド長期投与患者では,外因性にステロイドが投与されることでネガティブフィードバックがかかり,HPA系が抑制されていることがある.その場合,ストレス下で十分なコルチゾールを分泌できず,相対的にコルチゾールが不足し,急性副腎不全(代表的な症状・徴候:ショック,意識レベル低下,低血糖,低ナトリウム血症,高カリウム血症)をきたすことがあり,死亡例も報告されている.そのためHPA系の抑制が推測される患者では,副腎不全を予防する目的で周術期のステロイド補充療法,すなわちステロイドカバーが推奨されている(表1).
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