Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
沢木耕太郎の『流星ひとつ』—藤圭子の「舞台恐怖症」
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.338
発行日 2026年3月10日
Published Date 2026/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220540030338
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平成25(2013)年に発表された沢木耕太郎の『流星ひとつ』(新潮社)では,幼少期に父親によってなされた虐待が藤圭子に脅えやすさや自信の欠如のほか,解離性同一性障害を思わせる記憶の欠落をもたらした様子が語られる(総合リハ53:1062,2025)だけでなく,20歳台後半の藤圭子が「舞台恐怖症」になったときのことも語られている.当時,男性問題や咽喉の手術によって声の質が変わってしまったことに悩んでいた藤圭子は,「もう,どうでもいいっていうような気持になって……ぼんやり,死のうかな,なんて思うようになりはじめて……どうやって死ぬのがいちばんいいのかとか,夜になると考えるようになった」という.
そればかりではない.日本劇場でやっていたデビュー10周年の舞台では歌を忘れそうになった.「歌詞だけじゃなくて,メロディーも忘れそうになるの」,「舞台に立つと,突然,忘れてしまうんだ」,「四度か五度,続いたんだよね.自分で自分が怖くなった.もう,恐怖なんだよね.また忘れるんじゃないかって.そう思うと,舞台で体がすくんじゃうんだ」.
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