Japanese
English
症例報告
右半球損傷により失文法を呈した交叉性失語の1例
Agrammatism in crossed aphasia due to right hemisphere brain damage
佐野 剛雅
1,2
,
金子 真人
2,3
,
大塚 裕子
1
,
宇田川 晋
1
,
福田 空海
1
,
有井 一正
4
,
髙橋 宣成
1
Takamasa Sano
1,2
,
Masato Kaneko
2,3
,
Hiroko Otsuka
1
,
Shin Udagawa
1
,
Kumi Fukuda
1
,
Kazumasa Arii
4
,
Nobushige Takahashi
1
1東京都立多摩北部医療センターリハビリテーション科
2LD・Dyslexiaセンター
3国士舘大学大学院人文科学研究科
4東京都立多摩北部医療センター神経内科
1Department of Rehabilitation Medicine, Tokyo Metropolitan Tama-Hokubu Medical Center
2LD/Dyslexia Center
3Graduate school of letters, Kokushikan University
4Department of Neurology, Tokyo Metropolitan Tama-Hokubu Medical Center
キーワード:
もやもや病
,
交叉性失語
,
失文法
,
半球側性化
Keyword:
もやもや病
,
交叉性失語
,
失文法
,
半球側性化
pp.1047-1052
発行日 2025年10月10日
Published Date 2025/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530101047
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要旨 失文法は発話における格助詞の省略が特徴だが,格助詞の誤用や統語理解障害も呈すると報告されている.失文法の発生機序については,未だ明確になっていない.今回,右前頭葉の脳梗塞で失文法を呈した交叉性失語の1例を経験した.認知神経心理学的評価に基づき,自由発話・説明発話・説明書字による条件下で言語症状を対比し,右半球損傷による失文法の臨床像について検討した.語彙的側面の理解・表出能力は保たれていたが,自由発話において格助詞の省略が著明な電文体発話を認めた.格助詞の省略は説明発話や説明書字では少なかった.また,かきまぜ語順文の理解に著明な低下を認め,統語理解障害が示唆された.本例における失文法の機序は,脆弱な格助詞の使用が省略され,喚語能力が保たれている名詞や動詞を羅列した結果であり,統語理解障害が中核にあると考えられた.また,自由発話で格助詞の省略が著明な原因は,右半球症状としての発話意欲亢進に伴う注意力低下と考察した.

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