巻頭言
昭和の精神病回復途上者から平成の精神障害者へ,そして令和では
四本 かやの
1
1神戸大学大学院保健学研究科
pp.751
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530080751
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今年は令和7(2025)年だが,昭和の元号で数えると昭和100年に当たる.昭和時代には「障害者」とは身体障害者と知的障害者を指し,精神障害者は含まれなかった.当時の「我が国の精神衛生」では,デイケアなどの外来医療の利用者を「精神病回復途上者」と表現している.平成時代に精神障害をもちながら生きる人たちが「精神障害者」として法的に認められ,ようやく障害者福祉の対象になった.それ以降は,社会保障費の抑制を前提にしながらも医療費の抑制とは対照的に,障害福祉予算が増加の一途をたどった.結果,医療以外のビジネスモデルによる福祉やリハビリテーションサービスが盛んになる一方,現在では急な閉所や倒産などによる利用者の大きすぎる不利益も社会問題化している.
本誌の創刊は,昭和48(1973)年だが,精神障害者のリハビリテーションが特集されたのは平成8(1996)年7月のことである.平成時代の比較的早期に,本誌の対象として精神障害領域が認識されていたことは,その領域の作業療法士の一人として安堵する.さらに調べてみると,その後も精神障害リハビリテーションの論文は散見される.
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