Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
パーキンソン病はその進行度に伴って運動症状,非運動症状が多様化・重症化する.したがって,その現れ方や経過は対象者によって多様であり個別性が高い1).このような疾病の特性に加えて老化,環境の変化で活動が制限され,日常生活動作(activities of daily living:ADL)や手段的ADL(instrumental ADL:IADL)などの生活行為ができなくなる.リハビリテーションは機能障害の増悪をできるだけ遅延させ,社会的活動への参加を維持することが目標となる2).また,適切なリハビリテーションを提供するためには,治療目標,具体的な治療方法,症状に応じたリハビリテーションの選択が必要である.作業療法はリハビリテーションの一翼を担うため,本稿では症状や病期に応じた作業療法の進め方についてひもとく.
作業療法では,人は作業をしている,作業ができる状態が健康であり幸福な状態であると捉え,作業に焦点を当てた治療,指導,援助を行う3).ここで言う作業とは,「対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為」のことである.したがって,パーキンソン病の対象者に対しても,疾病の特性を踏まえながら作業に焦点を当てた治療,指導,援助を行う.
さて,パーキンソン病における作業療法のエビデンスは,日本神経学会による「パーキンソン病診療ガイドライン2018」3)で触れられており,「作業療法には,上肢の伸展を伴うROM訓練,ペグやビーズを用いた細かい上肢運動,反復運動を行う上肢エルゴメーター,移動訓練,安全技術,家族教育などがある.最近のRCTの報告では,作業療法の介入にて3か月,6か月の観察期間でADLが改善し,介護者の負担を減らせたという報告がある.今後,症例数を増やす必要があるが,有用性が認められている」と示され,作業療法の有用性について言及された.
このような背景のもと,日本作業療法士協会では近年,生活行為向上マネジメント(Management Tool for Daily Life Performance:MTDLP)4)の考えにより,対象者が実際に困っている事柄について具体的に聴取,その生活行為(つまり作業)に焦点を当てた目標を設定し,対象者がより主体的な生活を送れるように介入する方法が注目され,実践されている.そこで本稿は,以上のようなMTDLPを用いた作業療法の流れを提示するとともに,進行期ごとの事例で作業療法実践を紹介する.
Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.