連載 ケースレポート
地域医療構想と病院・63
清水赤十字病院—過疎地における広域連携および医療職の多能工化のモデル事例
松田 晋哉
1
1産業医科大学医学部公衆衛生学教室
pp.150-156
発行日 2025年2月1日
Published Date 2025/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840020150
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■はじめに
現在,厚生労働省における医師偏在の解消に向けた議論が活発に行われている.医学部における地域枠の設定,管理者になるための要件としての過疎地域における勤務経験,臨床研修広域連携型プログラムの導入,保険医登録を活用した医師配置の均てん化など種々の案が支援され,そのいくつかはすでに実行に移されているが,期待された結果が得られるには至っていない.医師の偏在をもたらしている要因は複数あり,それらが複雑に関連しあっており,その解消のための特効薬のようなものは期待できない.さまざまな方法を組み合わせながら,それぞれの地域に合った改善策を探ることにならざるを得ない.
実は,過疎地域の病院の中には,この医療職の偏在問題にさまざまな工夫をしながら取り組んでいるところが少なくない.そしてこれらの病院が行っている工夫を整理し,そのエッセンスを診療報酬などに取り込んでいくことが,国レベルでの医師偏在に関する検討の大きな参考になると筆者は考えている.諸外国の事例や頭の中だけで考えた仮説よりは,実際に行われている「すでに起こった未来」の方が説得力があるのは自明である.
本稿では,過疎地域における人的資源の不足に広域連携,そして医療職の多能工化によるチーム医療の実践によって対応している北海道上川郡清水町にある清水赤十字病院の取り組みを紹介する.
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