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がんは日本人の死因の第1位を占め,2024年の国内がん死亡者数は38万4,111人と報告されている。予防,診断,治療の目覚ましい進歩にもかかわらず,がん死亡者数が増え続ける主たる原因は,人口の高齢化にある。実際,大部分のがんは,遺伝因子,環境因子,加齢の掛け算によって生じるため,積極的に予防し,早期に対応し,数を減らし,制御を目指すことは可能であっても,完全に撲滅することはほぼ不可能に近いとも考えられる。一方で,特定のウイルスや細菌,寄生虫などの慢性感染が,明確な引き金となって生じるがんも,少なからず認められ,世界全体では約10%,日本を含むアジア,またアフリカではそれ以上の割合のがんが,感染を契機として生じているのも事実である。これらのがんは,当初は悲惨であっても,感染対策を厳重に行うことにより撲滅を目指すことができる点において,社会にとって,また,われわれのようながん研究に携わる者にとっても,このうえない魅力に満ちた重要標的とも捉えることができる。しかも,感染とがんに関する知見は,まさに日進月歩で増え続けており,最近では,腸内細菌叢による病態修飾など,従来の感染・感染症の概念自体を超えるような事実が見いだされ,理解が急速に深まり,広がりつつある。
そこで本特集では,ヘリコバクター・ピロリの慢性感染による胃がん,B型・C型肝炎ウイルス感染による肝がん,ヒトパピローマウイルス感染による子宮頸がんの3大がんに加え,EBウイルス,HTLV-1ウイルス,HIVウイルス,HHV-8ウイルスや,タイの肝吸虫など,感染を契機として生じる特徴的ながんについても,各領域を主導されている先生方に,病因論から臨床的課題,予防対策に至るまで,最新の知見をご執筆いただいた。更に,腸内細菌によるがん病態の修飾の実態が,急速に解明されつつあることから,感染によるがんを常在菌を含めて新たに拡大解釈した領域を設けて,世界的に活躍されている3名の先生方にご寄稿をいただいた。読者各位には,個々の事実の理解と共に,感染により生じるがん全体に共通する,医の原点とも言える課題や将来展望についても,考えをめぐらせる一助としていただければ幸いである。本特集の目的をご理解のうえ,ご多忙のなか,卓越した論文をご寄稿くださった執筆者各位に心から深く感謝申し上げる。

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