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免疫システムの司令塔であるT細胞は,その表面にT細胞受容体(T cell receptor;TCR)を発現している。TCRは自己と非自己を識別するうえで最も重要な分子である。TCRは,胸腺におけるT細胞分化の過程で複数の構成遺伝子がランダムに再構成されることにより,1010通り以上にも及ぶ膨大な配列多様性を示す(図1)。これら構成遺伝子の接合部位は非常に短く,平均して約15アミノ酸から成り,相補性決定領域3(complementarity-determining region 3;CDR3)と呼ばれている。再構成の過程では,複数のヌクレオチドがランダムに挿入あるいは欠失されるため,配列多様性は更に増大する。CDR3は抗原エピトープと物理的に接触する領域であり,抗原認識において最も重要な部位である。TCR多様性の主要な要素は,このTCR-CDR3の多様性に由来している。TCRは,この極めて多様な配列パターンを利用して,幅広い対応抗原を認識している。
歴史的には,TCRの解析にはスペクトロタイピング,ゲル電気泳動,サンガーシークエンシングなどの手法が用いられてきたが,これらの方法ではTCRレパートリーの全体像を捉えることはできなかった。2009年にRobinsらは,次世代シークエンシング(next-generation sequencing;NGS)を用いた初のTCRレパートリー解析を報告し,TCRを包括的に評価することを可能にした1)。それ以降,NGSを基盤とした数多くのTCR研究が報告され,TCRに対する筆者らの理解は大きく変革されてきた2-4)。例えば,多くの研究ではTCRクロノタイプをT細胞のシークエンスタグとして利用し,クローン拡大の規模5),個々のドナーにおけるTCRレパートリーの大きさ6),同一ドナー内の異なる組織間で共有されるレパートリーと特異的なレパートリー7),更には複数のドナー間で共有されるパブリック・クロノタイプが広く存在することなどが明らかにされてきた2)。加えて,多くの研究者がTCRデータセットを公共データベースに公開しており,オープンサイエンスの推進と,他研究グループによる追試・発展的研究を可能にしている。

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