先天性心疾患の発症メカニズム

Molecular and developmental mechanisms of congenital heart diseases

　先天性心疾患（congenital heart defect；CHD）は，出生児の約100人に1人が罹患し，新生児・乳児死亡の主要な原因である^1）。複雑なCHD症例では，出生直後から複数回の手術が必要となり，その後も生涯的な医療を要する場合が多い。したがって，その予防法や治療法の開発のために，CHDの成因解明が望まれる^2）。CHDの成因研究は，血液，がん，神経など他の先進的な領域に少し遅れて，遺伝子解析技術やモデル動物を用いた発生生物学的手法の発展により進んできた^3-5）（図1）。本稿では，遺伝学と発生学の両面から，CHDの発症メカニズムについて自身の研究を踏まえて概観する。