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特集 味と匂いの脳科学
Ⅲ.末梢臓器における化学受容と脳機能の調節
ストレスが味覚に及ぼす影響とその脳内メカニズム
Neural mechanisms regulating stress-induced taste modification
中島 健一朗
1
Nakajima Ken-ichiro
1
1名古屋大学大学院生命農学研究科食理神経科学研究室
キーワード:
視床下部
,
ストレス
,
空腹
,
社会的敗北ストレス
Keyword:
視床下部
,
ストレス
,
空腹
,
社会的敗北ストレス
pp.364-368
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760040364
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近年,世界では食の南北問題(飢餓に苦しむ人々がいる一方,肥満に悩む人々もいる)が顕在化している1,2)。国や地域によって抱える事情は大きく異なるものの,食と健康の関係は世界的に重要なテーマである。
一方,摂食行動は本能行動の一つでもある。なかでも味覚は,食物の価値の判断基準として機能し,様々な食物のなかから何を選んで食べるかを決めるうえで重要な役割を果たす。しかし,この基準は常に一定なものとして存在するのではなく,肉体や精神の状態に伴って変化することが経験的に知られている。このような味の感じ方の変化が生じる原因は長い間不明であったが,近年,味覚の脳内伝達機構や摂食調節の神経メカニズムの研究が進展したことにより,中枢神経系が味覚に及ぼす影響が徐々にわかり始めてきた。そこで,本稿では,ストレスが味覚に及ぼす影響と中枢神経系によって味覚が修飾されるしくみについて概説する。

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