増大特集 脳とからだ
Ⅰ.腸,免疫系,脳の相互作用
ストレスによる炎症応答のメカニズムとその役割
谷口 将之
1
,
北岡 志保
1,2
,
古屋敷 智之
1
Taniguchi Masayuki
1
,
Kitaoka Shiho
1,2
,
Furuyashiki Tomoyuki
1
1神戸大学大学院医学研究科薬理学分野
2兵庫医科大学薬理学講座
キーワード:
ストレス
,
炎症
,
ミクログリア
,
エピゲノム
Keyword:
ストレス
,
炎症
,
ミクログリア
,
エピゲノム
pp.389-392
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201396
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社会や環境から受けるストレスは抑うつなど情動変化を引き起こし,うつ病などの精神疾患のリスク因子となる。近年,ストレスによる情動変容における炎症応答の重要性が確立され,ストレスにおける末梢および中枢の免疫細胞の役割の研究が進められている。反復ストレスは内分泌系や自律神経系の活性化を引き起こし,単球や好中球などミエロイド系細胞の動員とその活性化を引き起こす。更に,内側前頭前皮質などの特定の脳領域においてミクログリア活性化を誘導し,神経細胞の樹状突起の退縮を伴った情動変容を促す。また,これらの炎症メカニズムに転写・エピゲノム制御の関与が推測される。これらの知見はストレス応答がエピゲノム変化として記憶され,炎症応答を修飾して情動変容を引き起こすことを示唆し,ストレスによる炎症応答を対象とした新たな創薬標的となる可能性が期待される。
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