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特集 味と匂いの脳科学
Ⅰ.味蕾・嗅上皮から脳への神経回路と情報伝達
チャネルシナプスの発見とその生命機能
The discovery of the channel synapse and its biological functions
樽野 陽幸
1
Taruno Akiyuki
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科細胞生理学
キーワード:
イオンチャネル
,
CALHM
,
味覚
,
咳嗽
,
嚥下
Keyword:
イオンチャネル
,
CALHM
,
味覚
,
咳嗽
,
嚥下
pp.293-296
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760040293
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シナプスは神経細胞間の情報伝達を担う構造であり,シナプス小胞の開口分泌による伝達物質の放出がその基本的な伝達機構として広く知られている。味覚は,化学物質が口腔上皮に存在する味蕾を刺激することによって生じる感覚であり,味蕾細胞(以下,味細胞)は求心性味神経へと味情報を伝達する。近年の研究により,味細胞の多くはシナプス小胞を持たず,代わりにシナプス前膜に局在する電位依存性チャネルCALHM1/3のポアを通じて伝達物質を放出していることが明らかになった。このようなチャネル分子を介した新しい化学神経伝達機構は,従来型のシナプスとは異なることから“チャネルシナプス”と呼ばれている。更に最新の研究では,このチャネルシナプスが舌以外の臓器にも存在し,生理機能を果たしていることが明らかになりつつある。本稿では,チャネルシナプスの発見の経緯と,現在明らかになりつつあるその生命機能について概説する。

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