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特集 顔の科学
Ⅲ.心理・脳科学
霊長類研究から明らかになった顔認知のメカニズム
Insights into face recognition mechanisms from primate research
網田 英敏
1
Amita Hidetoshi
1
1京都大学ヒト行動進化研究センター
キーワード:
脳科学
,
視覚
,
個人識別
,
親しい顔
,
表情
Keyword:
脳科学
,
視覚
,
個人識別
,
親しい顔
,
表情
pp.245-249
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760030245
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顔は豊富な情報を外部に伝える器官である。われわれは,顔の形態的な特徴(容貌)から,その人の性別や年齢を判断し,以前その人と会ったことがあるか,自分と親しい関係にあるかを認識することができる。更に,その人の表情から機嫌がよいか,友好的であるか,といったコミュニケーションにおいて重要な手がかりを読み取っている。われわれの脳は,普段からこのような高度な情報処理を当たり前のように行っている。
非ヒト霊長類(サル)を対象にした研究は,顔認知を担う脳の情報処理プロセスを明らかにすることに大きく貢献してきた。サルもヒトと同様に顔を見て他個体を認識し,他者の心理状態を推測している。また,パレイドリア(物体の模様が顔に見える心理的現象)やサッチャー錯視(上下反転した顔では局所的な顔の差異に気づきにくい現象)といった顔の錯視現象がサルにもみられることから1,2),サルとヒトの間で顔認知に関連する共通の神経基盤が存在すると考えられる。実際,機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging;fMRI)や電気生理学的手法を用いた研究により,顔に対して選択的に反応する脳領域がサルとヒトで共通していることがわかってきた。本稿では,サルを対象とした脳科学研究によって明らかになってきた顔認知の神経基盤について解説する。

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