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特集 顔の科学
Ⅱ.疾患
コウモリ類研究から迫るヒト先天性疾患発症メカニズムと哺乳類顔面の多様化
Bat studies as a novel model to unravel human congenital disorders and the diversification of mammalian faces
目黒 史也
1
Meguro Fumiya
1
1筑波大学プレシジョンメディスン開発研究センター
キーワード:
口唇口蓋裂
,
コウモリ類
,
口蓋形成
Keyword:
口唇口蓋裂
,
コウモリ類
,
口蓋形成
pp.224-229
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760030224
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哺乳類はその名のとおり,幼年期に母乳を吸うことで栄養を摂取する。この“吸啜”という行為は,哺乳類が進化の過程で獲得した顔面形態的特徴,すなわち発達した表情筋や閉鎖された口蓋によって支えられている。特に,口蓋の形成過程に異常が生じると,先天的な哺乳機能の障害を引き起こす。このうち,ヒト口蓋の発生異常によって生じる疾患が口唇口蓋裂である。口唇口蓋裂はヒトの先天性疾患のなかでも特に高頻度で発症することが知られており,その発症メカニズムの解明や先制治療の確立を目指した研究が国内外で活発に進められている。
筆者は,口腔領域の発生学を専門とする歯科医師としての知見を活かし,これまで実験用マウスが主流であった口唇口蓋裂研究に新たな視点を加えるべく,コウモリ類をモデルとした研究体系の構築に取り組んでいる。本稿では,昨年発表したコウモリ類の比較発生学的研究成果を踏まえ,コウモリをモデルとした顔面発生研究の科学的意義とその展望について論じる。

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