特集 みんな大好き! 涙道クリニックっ。
企画にあたって
稲谷 大
1
1福井大学医学部眼科学教室
pp.1499
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037055790790131499
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涙は眼表面を保護し,清潔を保つために不可欠な生理機能であると同時に,感情を表す象徴でもあります。しかし,その涙が常に頰を伝って流れている状況は,患者本人の不快感にとどまりません。周囲の人々も「体調が悪いのではないか」「泣いているのだろうか」と気をとめ,時に心配を寄せることになります。涙道疾患は,症状の軽重を問わず,生活の質や社会的かかわりに直接影響を及ぼす点で,眼科医にとって看過できない領域です。
涙道はきわめて小さな構造ですが,そこに生じうる病態は多岐にわたります。先天異常から加齢性変化,外傷,炎症,さらには腫瘍に至るまで,発症背景は幅広く,診療の現場で遭遇する機会は決して少なくありません。適切な診断と治療を行うためには,基礎的な解剖や生理の理解と,臨床現場での観察や検査の積み重ねが重要です。涙道診療は,専門医だけの特別な分野ではなく,一般の眼科診療においても必須の知識体系であるといえるでしょう。

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