特集 日本のがん対策 過去・現在・未来—がん対策基本法成立20年を迎えて
Editorial—今月号の特集について
田中 英夫
1
1守口保健所
pp.941
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890110941
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今年は2006年にがん対策基本法が成立して20年目に当たります。この間、国は4度の「がん対策推進基本計画」(以下、基本計画)を策定し、日本のがん対策は他の疾患群の対策に比べてがん登録資料などの客観性の高いデータに基づき、より科学的に立案、計画策定、実行および評価がなされてきました。この節目の年にこれまでの対策の戦略的思考とその進捗や成果をレビューすることは、公衆衛生的な立場でがん対策に関わる皆さんはもとより、がん以外の疾患のPDCAサイクルを回す立場にある人たちにもアナロジーとして参考になると思われ、本企画に取り組むことになりました。
本号では順に、①日本のがん対策の変遷と第4期基本計画に導入された対策推進の肝となるロジックモデルの解説、②総合的なアウトカム指標として極めて重要な5年生存率の算出基盤の形成過程と成績の推移、③患者目線で見たがん診療連携拠点病院とがん患者会が果たした役割、④がん死亡率が全国で最も高い青森県での全県を上げた戦略的取り組みとその成果、⑤行動科学や行動経済学を活用したがん検診受診率の向上手段の開発と適用およびその効果、⑥約10年間続いたHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン定期接種の忌避により今後何が起きるか、そして⑦第4期基本計画の全体目標である「誰一人取り残さないがん対策を推進する」ために最も重要な、健康の社会的決定要因に着目したがん対策の解説、となっています。それぞれの論文の末尾には、執筆者らが考える課題解決に向けた今後の展望が記されています。

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