特集 傷害予防—事故による健康被害の予防を目指す公衆衛生アプローチ
Editorial—今月号の特集について
冨尾 淳
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1国立保健医療科学院健康危機管理研究部
pp.385
発行日 2025年5月15日
Published Date 2025/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890050385
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交通事故や溺水、転倒・転落などの事故による「傷害(injury)」は、私たちの生命や健康、生活に大きな影響を及ぼします。わが国においても、「不慮の事故」による死亡者は年間4万人を超え、特に、子どもや若者、高齢者では死因の上位を占めています。しかし、これらの傷害の予防に向けた施策や取り組み、すなわち「傷害予防(injury prevention)」は、わが国では必ずしも公衆衛生上の課題として認識されておらず、交通事故や重大製品事故への対策など、関連する施策の多くは保健医療部門以外の所管となっています。
一方、世界に目を向けると、傷害は、故意によるものか否かによらず、公衆衛生上の重要課題と考えられており、WHO(世界保健機関)は、交通事故や子どもの事故の発生動向を把握・分析し、道路交通安全をはじめとする傷害予防の取り組みを推進しています。

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