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はじめに
都立看護専門学校(以下、都立看学)7校では、平成27(2015)年度から「看護基礎教育の充実プロジェクトチーム」により検討を重ね、「新カリキュラム都案」を令和3(2021)年3月に完成させた。社会のニーズ、特に首都東京における看護の役割を果たすべく「感じ取る力」「考え構成する力」「表現(具現化)する力」「成長する力」の4つの力を発展させながら、さまざまな対象、健康段階、看護活動の場に応じた基礎的看護実践能力を養うカリキュラムとしてスタートし、現在4年目の運用中である。なお、編成過程とカリキュラムの概要については本誌61巻4号1)、62巻4号2)、5号3)で報告している。
地域包括ケアシステムの拡充や医療DXの推進など、わが国の医療は急速な変化を遂げており、看護師に求められる能力はますます多様化、複雑化している。一方で18歳人口の減少や若者の働き方への意識変化、近年上昇傾向の新人看護師離職率など、看護師育成の課題も大きく変容し続けている。そのような課題を的確に捉え、時代の要請に合った効果的なカリキュラムへと進化していくためには、教育機関が体系的かつ継続的な評価活動を推進し、教育内容の再構築や指導方法の改善に取り組むことが求められる。
カリキュラム評価は「その教育機関が編成、実施しているカリキュラムを対象として必要なデータを収集、分析し、学校の教育目的に即して望ましい変化を遂げるために必要な諸経験を提供する意図的、組織的な教育内容の全体計画を査定し、その結果に基づきカリキュラムを改善し、教育目的・目標の達成の促進を目的とした活動」と定義される4)。具体的には教育目標の達成状況、授業内容が最新の医療知識・技術に適合しているか、卒業生が臨床で必要とされる実践能力を身につけているかなど、多面的な検証が行われ、その結果に基づきカリキュラムを改善する活動までを指す。しかし、評価指標の策定、データの収集および分析、さらに評価結果の教育改善への反映には相応の時間と労力を要する。これらの活動は、実習指導や授業準備、学生指導などで多忙を極める専門学校の教員にとって、負担が大きい取り組みでもある。しかし、時代の要請に応え質の高い看護師を育成するためには、教員が一丸となって取り組まなければならない。
都立看学教務総括担当者会では、新カリキュラム3年目となる令和6(2024)年度に、都立看学のディプロマポリシーを視点としたカリキュラム評価に取り組んだ。
本稿では、まず都立看学の理念である「都民の健康の担い手として活躍できる看護師の輩出」に焦点を当てて開発した2つの科目を紹介すると共に、今回のカリキュラム評価のプロセス、課題について報告する。

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