今月の主題 前立腺癌
巻頭言
前立腺癌の臨床と研究に臨まれるもの
坂本 穆彦
1
Atsuhiko SAKAMOTO
1
1杏林大学医学部病理学
pp.1623-1624
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102176
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前立腺の二大疾患としては腺癌と前立腺肥大症が挙げられる.癌は前立腺の外側域,肥大症は内側域と好発部位が分かれる.癌は単クローン性増殖を示すので,そのルーツとなる細胞をまずたどってみる.前立腺を組織学的にみると,多数の複合管状腺が尿道を取り囲んで分布し,それらは数十本ある導管につながっている.導管は個々に尿道に開口している.上皮細胞は基本的には円柱上皮の形状を呈し,間質には平滑筋成分が豊富である.この様な構造の中から前立腺癌が発生するわけであるが,そのほとんどが腺房細胞由来の腺癌である.WHO組織分類では,この通常型(common type)に相当するものを腺房腺癌(acinar adenocarcinoma)と呼び,頻度の低い腺癌である導管由来の導管腺癌(ductal adenocarcinoma)とは分けて扱っている.
前立腺は乳腺と構造が似ているので,いろいろな類似点を論じられることがある.前立腺の腺房に当たる乳腺小葉由来の小葉癌(lobular carcinoma)は乳癌では特殊型に属している.つまり,小葉癌の乳癌全体における頻度は低い.他方,乳癌でよくみられるものは導管癌である.導管癌は前立腺では稀である.腺癌の発生母地別にみた頻度は通常型と特殊型の比率が,前立腺癌と乳癌とでは正反対の状態である.この違いは何によるものであろうか.
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