書評
—南 学 監訳 小林 有香 訳—CT・MRI正常所見ポケットアトラス第2版
森 墾
1
1自治医科大学医学部放射線医学講座
pp.2225
発行日 2025年12月10日
Published Date 2025/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002576990620132225
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守破離の守のバイブル
本書はタイトルに「正常所見」とあるように,画像に関する正常値データが記載されている.画像解剖学として人体構造の正常値については,意外と成書では具体的に触れられておらず,初版の頃からひそかに本書に頼っている臨床医も多かろう.ただし,正常値については後で述べる瑕疵があるため,ひとまず置いておくとしても,本書の真の価値はそこではない.何といっても,各画像検査項目について「正常画像レポート見本」や「チェックリスト」が系統的に並べられているのが出色である.どういうことだろうか.
初学者が新しい画像検査の研修を開始するときにまず行うことは何か.それは,諸先輩方が累々と書きつないできた報告書を集めることにある.少なくとも私はそうした.珠玉の報告書を手に入れたら,実際の画像とその報告書を突き合わせて,どのような着眼点で画像を見渡して,問題点(所見)を抽出し,それをどう解釈して,最終的な結論に結び付けるのか,文章の書き方をひたすら見よう見まねで会得したものである.その作業は,先人の叡智の最大公約数を方法論として集約することともいえる.さらに端的にいえば,標準化する作業である.この手順のうち一番初めの取っ掛かりである「どのような着眼点で画像を見渡すのか」については,本書の「正常画像レポート見本」に見事に整理されている.本書を片手に,各領域の画像をじっくり時間を掛けて順序だてて読影を繰り返せば,一見,迂遠に思えて実は,たちまち系統的アプローチが会得できるのである.ひそかに先輩方の報告書を読み込んでいた自分の努力が無駄に思えてしょうがない.

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