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はじめに
数年前のことである。あるアパレルショップに入った私は何とも落ち着かない雰囲気の中におかれた。1〜4Fのフロアはすっきりと近未来的であり,多様なジャケットやシャツ等のアイテムが現代的にレイアウトされている。客は数人,会話しながら見ている。ただ,店員さんが見当たらない。私は,着心地のよさそうなシャツを見つけ,他の色も見てみたいと思った。でも相談する店員さんが見当たらない。しかたなく,その色でいいかと思いレジらしき場所にシャツを持って歩き始めた。すると,どこからか店員さんが現れたのである。まるで2040年以降の未来社会に迷い込んだようであった。
社会のDX(Digital Transformation)化が急速に進み,医療・看護のDXも私たちが追いつけない速さで進んでいる。AIはいまや私たちのごく身近に存在し,アクセスしない日はないかの様相となっている。社会のDXが一層発展した未来社会における看護の現場には,一体どのような光景が広がっているだろうか。効率化(efficiency)を追求した結果,AIを搭載した機器に人までが収まって医療を受け,周りには看護職を含めて人の姿はほとんどみられない,といった未来なのか,あるいは,AI等の機器の進歩により一般的な説明や観察,記録が自動的に遂行され,そのデータを利活用することで,人と人が対面でゆったりと個別のケアに時間を費やすことが可能となっている未来なのか,どちらであろう。どちらも現実味があり,これらが混在するのかもしれない。どの方向に進むかは,私たち看護職が未来の看護の姿をどのように志向するか,そして医療を受ける1人ひとりがどのような方向を望むかに左右されるであろう。

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