書評
ケアする者を元気にする本気の事例研究方法
西村 ユミ
1
1東京都立大学大学院人間健康科学研究科
pp.385
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580040385
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本書は,著者らによる12年の活動の集大成であり,かつ事例研究(以下CMC)の実証研究への「チャレンジ」である。
集大成であるのは,著者が「私にはとてもできないと思うような」すぐれた実践を可視化する取り組みの中で,看護の事例研究を「研究」として位置づけること,それによってすぐれた実践の知を共有し,他の人々にも伝えられる,かつ楽しく取り組める研究方法を試行錯誤して生まれてきた方法であるためだ。が,著者らがめざしているのは,研究方法をつくることのみではない。それは目的の1つであり,むしろ,言葉になり難い実践を言語化し,それによって実践家が気づきを得て,その方法自体が現場に根づいていくこと,あるいは,実践家たちが自分たちの実践に自信をもち,次の実践に役立てられること,他の看護師たちが自らの実践に取り入れられること等々,この研究の成果の連なりは甚大だ。看護師たちは,研究チームでの「問われ語り」のプロセスを経て,実践の「キモ」や「コツ」を表現する「メタファー」を見いだし,これを「見出し」として研究成果を組み立てていく。方法や成果をわかりやすくすることで,実践家が研究し,それを実践に役立てることを実現させる。

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