書評
―稲川利光(著)―生き生きケア選書 老人ケアの元気ぐすり―“心の元気”を吹き込む「ケアの元気ぐすり」
村上 重紀
1
1御調町保健福祉総合施設付属リハセンター
pp.566
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105857
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「身体拘束ゼロへの手引き」が厚生労働省から発行された.介護保険法の施行に伴い,介護保険施設におけるケアの質の向上を促すためである.「拘束」とは貧しいケアの象徴である.だから,「なにが,またどこまでが拘束なのか?」という議論はまるで意味がない.さまざまな理由や形で行われている「拘束」の実態を直視し,その検証を通して,高齢者の人権やケアの意味を問い直す意識と,現場での「拘束ゼロ」への取り組みこそが肝要なのだ.本書『「老人ケアの元気ぐすり』はそうしたケアの意味を,しかし理屈ではなく身をもって示してくれる楽しい実践レポートであり,情感豊かなリハビリエッセイである.
著者の稲川利光さんはPT(理学療法士)として病院・地域で活躍し,その後医師を目指して医科大学に入学し,40歳を超えてから医師になった人である.その経歴も異色だが,もともと人間が異色なのだろう.そのことはPT時代に,「ET」(Entertainment Therapyの略)という新語を掲げ,「つらく苦しい機能訓練ではなく,明るく楽しいETを」と提唱し,お年寄り,家族,セラピストが共に楽しみながらすすめる新しいリハビリの形,いわゆる“遊びリテーション”の先駆的な実践を積み重ねてきたことからもうかがわれる.
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