特集 【研究する人間】木下康仁先生の功績と足跡
Ⅰ.研究者として,教育者として—木下康仁先生との在りし日
Ⅰ-2 看護学との邂逅
実務家の研究的思考を信じ,育む社会学者
萱間 真美
1
1国立看護大学
pp.20-23
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580010020
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はじめに
木下先生は著名な社会学者であり,実践現場を変革するための理論構築・実装と,それにチャレンジする人に目を向け,育む人であった。現象から距離を置いて本質を見極める社会学者の視点と,現象の中に当事者として関与する視点の双方を持っておられた。また,実務家を研究者としても信頼し,訓練の途上にある人を育てることに注力されていた。このことが,研究を実践する人に分析の重点を置いた研究方法としてのM-GTAの創出につながったと拝察する。
私は,1991年に修士論文でグラウンデッド・セオリー・アプローチを研究方法として選択した際に,恩師から木下先生を紹介いただいた。以後今日まで,様々な形で先生のご指導を受けてきた。先生は研究者として理論を構築する人であり,その理論を実装する試みを続ける人であり,管理者として組織を動かし,様々な変革に取り組もうとする人を支え・育てる人であった。もう先生と直接お話しできないという事実は,まだ受け止め難い。実感もない。先生とのエピソードを記す機会をいただいたことに感謝しながら記したいと思う。

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