書籍・雑誌概要

摂食障害対策の現状と最新トピックス
　本誌で前回に摂食障害の特集が組まれたのは，2015年12月号のことになります．前年2014年には米国精神医学会の診断基準の改定が行われたのを機に，摂食障害の日本語病名が見直され「食欲」という言葉が外れることとなり，また2015年2月には厚生労働省による「摂食障害治療支援センター設置運営事業」が開始されたというタイミングでもありました．報道やインターネット上の話題を見ていると，その後の6年間で，摂食障害に関する啓発に加え，痩せすぎモデル問題やアスリートにおける摂食障害などのトピックスが取り上げられることも増えてきたように感じています．
　そこで今回の特集では，ここ数年ますます活発になってきている摂食障害対策の動向を知ることができるよう，厚生労働省事業や研究班，国内外の診療ガイドライン，新たに診療報酬が算定可能となった認知行動療法，日本摂食障害協会の活動などについて，それぞれを推進されてきた先生方にご執筆いただきました．また，前述のトピックスのほか，家族支援や高齢摂食障害患者の栄養指導，再栄養などの最近の話題や，改めて確認したい面接の注意点についてもわかりやすくご解説いただいています．本特集を通して，現在の摂食障害医療の潮流について把握いただければ幸いです．そして，さまざまな職種や立場の人間がつくり出すこの大きなうねりの一部として，今後も読者の皆さんと一緒に活動していけることを願っております．

目次

日本と海外の摂食障害診療ガイドラインの現状　　吉内一浩……642
摂食障害治療支援センター設置運営事業の総括およびAMED研究班成果物について　　安藤哲也……645
摂食障害に対する認知行動療法（CBT-E）とその普及啓発活動　　髙倉修……652
一般社団法人日本摂食障害協会の活動　　鈴木眞理……657
摂食障害患者との面接の留意点―精神科医の立場から　　西園マーハ文……663
摂食障害者の家族支援　　小原千郷……667
再栄養についてのアップデート　　山崎允宏……672
高齢摂食障害患者の栄養療法　　澤田実佳……677
[Column] 痩せすぎモデル問題とその背景―どうして欧米では規制が進んでいるのか　　山田恒……682
[Column] 女性アスリートと摂食障害　　宇津野彩，能瀬さやか……685
●巻頭カラー　
冬眠する哺乳類に学ぶ―代謝変化により飢餓・寒冷を乗り切る仕組み〈前編〉　　山口良文……628
●スポット　
野菜摂取量を非侵襲で推定できる「ベジチェック®」　　菅沼大行，松本舞……634
日本版敗血症診療ガイドライン2020について　　東別府直紀……636
●ORIGAMI ART―食に活かすおりがみ　
ざくろ　　西田良子，立木美保……689　
●活動レポート　栄養ケア・ステーション　
認定栄養ケア・ステーション くるみ　　中野ヤスコ……692　
●ぷろらぼ　研究室で学んでみませんか　
保健・医療・福祉の学問的なエキスパートを育成　神奈川県立保健福祉大学大学院 保健福祉学研究科　ヘルスイノベーション研究科 中島研究室　　中島啓……694　
●こんだてじまん　
じまんの一品料理　にんじんピューレ／医療法人啓仁会 所沢ロイヤル病院　　原島菜美……696　
●栄養指導に役立つ医薬品の知識　
16．疾患における薬物治療と栄養（4）　消化器疾患に対して使用される薬剤　　神谷貴樹……701　
●Medical Nutritionist養成講座　
水分投与量の決定：私の考え方（2）　　井上善文……707　
●『日本食品標準成分表』の活用でもっと深まる　食品と調理のキソ知識　
30．菓子類2　　渡邊智子……714　
●研究・調査　
PHGG（グァーガム加水分解物）の炎症抑制および感染症予防の可能性の探索―基礎的・臨床的意義の検討　　待田京香，堤理恵，原加奈子，三島優奈，巽絢子，京面ももこ，筑後桃子，田尻真梨，山田静恵，鈴木佳子，黒田雅士，阪上浩……730
●日本栄養士会医療職域　
2021年度全国栄養士大会（オンライン）報告　　温谷恭幸……737
自治体病院
彦根市立病院 栄養科の取り組み　　大橋佐智子……738
精神科病院
精神科領域で求められる在宅での食事や栄養のサポート　　石岡拓得……739
厚生労働省・消費者庁
10月10日「世界メンタルヘルスデー2021」・他……740
●おしらせ　
第8回日本サルコペニア・フレイル学会大会・他……742