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白内障手術ロジカルテクニック
筆頭著者 柴 宏治 (著)
三輪書店
電子版ISBN
電子版発売日 2024年5月13日
ページ数 180
判型 B5
印刷版ISBN 978-4-89590-813-9
印刷版発行年月 2024年4月
書籍・雑誌概要
あなたはロジックに基づいて白内障手術をしていますか?本書では合理的な手術手技が身につくよう、1つひとつの動作に対する理由や考え方が解説され、術中合併症を未然に防いで安全に手術を進められるスキルが習得できます。本書で理にかなった白内障手術の「型」をマスターすれば、直面するさまざまなトラブルに対処し、症例を見てあらかじめ困難な展開を見通せる眼科医を目指せます。
目次
Chapter1 手術前の準備
1 手術への心構え
手術は誰のため?
より美しい手術を!
手術動画の見直し方
①早送りをしない
②上級医など手術の上手な第三者と一緒に動画を分析する
③何度も繰り返し見る
④特に眼の位置や動きに注意する
術中合併症は“合併症”と思わずゴールまでの1つの分岐と考える
手術をするときは自信をもって終わった後は常に反省と考察を
2 手術のセッティング
使用する機器・準備
①術者のポジショニング
②白内障手術に必要な基本セット
③フットスイッチの位置
効果的なドレーピングのコツ
①ドレープの種類
A:テガダーム付きドレープ/B:穴あきドレープ+テガダーム/C:開瞼器付きドレープ
②貼付方法
A:テガダーム付きドレープ/B:穴あきドレープ+テガダーム
開瞼器の選択と設置
①開瞼器の構造
A:開瞼部の形状/B:支持部の形状/C:開瞼維持装置の形状
②開瞼器の設置のワンポイントアドバイス
お助けQ&A
Q1 ドレープをうまく貼れたつもりでも,手術開始から時間経過とともに徐々にはがれてきてしまいます.どのような点に気をつければよいでしょうか?
Q2 穴あきドレープを貼る際に上眼瞼ぎりぎりから貼付して,テガダームが貼りにくくなったり開瞼器が設置しづらくなったりしませんか?
Q3 ドレープをうまく貼ったつもりでも,開瞼器を設置するときにどうしても睫毛が出てしまいます.
3 麻 酔
麻酔の種類
①4%リドカインによる点眼麻酔
②0.5~1%リドカインによる前房内麻酔
③2%リドカインによるテノン囊下麻酔
テノン囊下麻酔の方法
①麻酔を注入する場所
②麻酔針を挿入する角度
A:シリンジを角膜側に傾けて注入/B:シリンジを垂直に立てて注入/C:シリンジを角膜と反対側に傾けて注入
お助けQ&A
Q4 テノン囊下麻酔をすると硝子体圧が上がって手術しにくくなることがあります.もし,手術中に硝子体圧が上がりすぎて手術が困難になった場合は,どのようにすればよいでしょうか?
Q5 テノン囊下麻酔薬を注入後に結膜が腫れてしまい,水がたまりやすくなった場合はどうすればよいでしょうか?
Q6 上方(眉側)からテノン囊下麻酔をして効きすぎると,眼球が下を向いてしまい手術が難しくなることがあります.対策はありますか?
Q7 テノン囊下麻酔を行う位置の解剖学的なメリット・デメリットを教えてください.
Chapter2 手術の方法と手技
1 眼内操作ポートの作製
サイドポートの作製
①サイドポート作製用ナイフとその使用法
A:片刃メス/B:両刃メス
②刺入方法
A:虹彩リトラクター/B:チストトーム・虹彩剪刀・前囊切開鑷子など/
C:核分割フック
divide & conquer法/phaco chop法
メインポートの作製
①メインポート作製用ナイフとその使用法
A:ストレートナイフ/
B:クレセントナイフ
①先端の円弧部分(円刃部)/②円弧とサイドの刃の移行部(円刃部)/③両サイド(拡大刃部)
C:スリットナイフ
②刺入方法
A:単純一面切開/B:三面切開
お助けQ&A
Q8 サイドポートを作製して手術を進めていく過程で,サイドポートの場所を見失うことがよくあります.なにか対策はありますか?
Q9 メインポートを作製する位置はどこがよいでしょうか?
Q10 単純一面切開のメインポート作製で,早期穿孔をしてしまうことがあります.
Q11 メインポートの内方弁は拡大したほうがよいでしょうか?
Q12 メインポートを作製する際,角膜切開と強角膜切開の使い分けはどのようにすればよいですか?
2 前囊切開
使用する器具
①チストトーム
A:持ち方/B:操 作
切開線の作製/前囊の立ち上げ/フラップ操作
②稲村氏式前囊切開鑷子(稲村鑷子)
A:持ち方/B:操 作
切開線の作製/前囊の立ち上げ/フラップ操作
③池田氏式前囊切開鑷子(池田鑷子)
A:持ち方/B:操 作
切開線の作製/前囊の立ち上げ/フラップ操作
様々な前囊切開時のトラブルとその対処法
①“フラップ流れ”への対処
A:軽度の“フラップ流れ”/B:中等度以上の“フラップ流れ”
②前囊の石灰化による“フラップ作製や進行の困難”への対処
③チン小帯脆弱による“フラップの進行困難”への対処
④成熟白内障における“フラップの視認性の低下”への対処
A:粘弾性物質の追加/B:灌流吸引による皮質除去
お助けQ&A
Q13 前囊切開のときに用いる粘弾性物質はどのようなものがよいでしょうか?
Q14 インドシアニングリーンやトリパンブルーを用いた前囊染色をルーチンで行うべきでしょうか?
Q15 CCCを行っている途中で,前囊をを見失ってしまうことがあります.どうすればよいでしょうか?
3 ハイドロダイセクション
使用する器具
器具の持ち方
方法とバリエーション
①オーソドックス法(一般的な方法)
②皮質分離法(特殊な方法)
③二段階法(筆者が考案した方法)
A:一段階目/B:二段階目
④CCCジョイント法(筆者が考案した方法)
操作のポイントと注意点
お助けQ&A
Q16 水晶体温存硝子体手術での破囊など,あらかじめ後囊破損がわかっている症例におけるハイドロダイセクションの方法や考え方を教えてください.
4 超音波水晶体乳化吸引 ①核処理の基本
超音波ハンドピースの持ち方
①不適切なペンホルダーグリップ
②持ち方の原則
A:USハンドピースの下に指が入り込まない/B:手の甲を上に向ける
③グリップを持つ位置
核処理のバリエーション
①一手法
②divide & conquer法(D&C法)
③phaco chop法(chop法)
核処理に必要なその他の知識
①機器の特性
②灌流ポートが作る水流の存在
③角膜の厚み
④使用する器具の特徴
A:核分割フック
徳田氏式核分割フック/フェイコチョッパー
B:フェイコチップ
ストレートチップ/ケルマンチップ/バランスドチップ
お助けQ&A
Q17 ベベルアップ,サイドべベル,ベベルダウンについて教えてください.
5 超音波水晶体乳化吸引 ②D&C法
超音波の設定
USハンドピースの動きのイメージ
溝掘り時の超音波のかけ方
①溝の幅は広く
②深く掘る
③溝掘りの全長と核硬度
核分割
核の破砕と吸引
6 超音波水晶体乳化吸引 ③chop法
核へのUSチップの打ち込み
①核の中心付近を少し掘削後に打ち込む方法
②ダイレクトに打ち込む方法
核分割
①1段階目:核の捕獲
②2段階目:核の切開
③3段階目:核の分割
A :利き手(右手)を固定し,非利き手(左手)のみで分割(止め割り)
B :両手で分割(剪断割り)
C :徳田氏式核分割フックによる一般的な核分割法
D :USチップと核分割フックを左右に開くように分割(扇割り)
E :USチップと核分割フックで挟み込んで分割(潰し割り)
核の破砕と吸引
①チップ先をあまり動かさない
②核処理の起点を分割核の先端から行わない
③可能な限りUSチップが完全閉塞しないようにする
④最適なペダルワークを体得する
状況に応じたテクニック
①切り飛ばし
②引き落とし
③ドーナツ処理
④apple peeling処理
⑤ピースメリーゴーラウンド法
⑥ベベルダウン破砕
お助けQ&A
Q18 最後の1/4核を吸引するときに気をつけることを教えてください.
Q19 後囊がバタつきます.改善するにはどうすればよいでしょうか?
7 灌流吸引による水晶体皮質除去
I/Aハンドピースの持ち方
①水平に近い状態を保つ
②スムーズに回転させる
皮質除去のポイント
①ブロック単位での皮質除去
②連続的な皮質除去
8 眼内レンズ挿入と創閉鎖
レンズ挿入時のポイント
①レンズ挿入前の粘弾性物質は囊内には十分な量,前房には少なめに注入する
②プッシュ式インジェクターは拇指球で押す
③フックでダイヤリング挿入するときはダイヤリングしてはならない
創閉鎖のポイント
①指押しシーリング
②ハイドレーション
お助けQ&A
Q20 トーリックレンズ挿入のコツを教えてください.
Chapter3 難症例と術中合併症への対策
1 難症例と術中合併症の考え方
“難症例”と“通常症例”との違い
基本手技の熟達で防げる術中合併症
2 核が硬い症例
手術の際の留意点
①その他の問題点を含んでいる可能性
②核周囲皮質の性質の違い
③やや困難となる核分割フックの挿入(chop法)
④溝を掘る際のチン小帯への負荷(D&C法)
手術の進め方
①核の打ち込みは確実に(chop法)
②核の分割は4分割以上で
③溝掘りは十分な幅と深さを(D&C法)
④核の破砕はあせらずゆっくりと
⑤バランスドチップの屈曲部の位置に注意
お助けQ&A
Q21 核破砕でUSチップが閉塞しないよう,どのように意識してペダルワークを調節していますか?
3 小瞳孔例
手術の際の留意点
①合併症を考慮する
②通常の小瞳孔と術中虹彩緊張低下症は区別して考える
③一定のブラインド操作や,器具を用いた補助的確認が必要
手術の進め方
①メインポートの作製方法は原則変更しない
②CCCやハイドロダイセクションはブラインド操作で
A:虹彩拡張デバイスの危険性/B:ブラインド操作の必要性/C:実際のブラインド操作
③瞳孔径が5mm未満では核を5分割以上に
④灌流吸引は原則的には通常症例と同じ
小瞳孔例への対策と手技
①虹彩リトラクター
A:サイドポート作製/B:設置方法/C:虹彩リトラクターのフック方法/D:虹彩リトラクターの抜去
②虹彩切開
A:サイドポート作製/B:切開方法/C:虹彩切開後の超音波乳化吸引の注意点
4 チン小帯脆弱・部分断裂例
手術の際の留意点
①複数の合併症の存在
②補助具を効果的に使用すべき
③USハンドピースの安全可動域は狭い
④いわゆる難症例に対する手技の集大成
手術の進め方
①ポートの作製
②前房形成とCCC
A:前房形成
硝子体圧を下げる方法/粘弾性物質の工夫
B:CCC
③ハイドロダイセクション
④超音波操作
A:カプセルエキスパンダーや虹彩リトラクターの使用
上方断裂/側方断裂/下方断裂
B:水晶体囊拡張リングの使用
挿入のタイミング/挿入方法
C:核分割と破砕
⑤灌流吸引による皮質除去
⑥眼内レンズ挿入
A:挿入の手技
ダイヤリングせずに挿入する方法/ダイヤリングを用いて挿入する方法
B:粘弾性物質の注入
お助けQ&A
Q22 眼内レンズ挿入後にダブルCCCで拡大する方法を教えてください.
5 虹彩脱出
虹彩脱出の原因
脱出の予防対策
脱出した虹彩の整復
①強角膜あるいは角膜トンネルへの嵌頓のみの場合(脱出した虹彩が視認できない場合)
②メインポートから脱出した虹彩が視認できる場合
③整復困難な高度の虹彩脱出の場合
6 後囊破損(破囊)
後囊破損の原因
原因別の対策
①メインポートやサイドポートの作製で引き起こされる後囊破損
A:刺入角度の調整/B:前房形成のための工夫/C:サイドポート作製方法の工夫
②ハイドロダイセクションにおける後囊破損
③超音波操作における後囊破損
④灌流吸引における後囊破損
⑤眼内レンズ挿入における後囊破損
⑥粘弾性物質のwash out時における後囊破損
後囊破損の程度による処理方法の違い
①小さな後囊破損(硝子体脱出なし)
②小さな後囊破損(硝子体脱出あり)
A:USハンドピースの抜去/B:核の娩出/C:残存核への対応
残存核が小さい場合/残存核が大きい場合/残存核が極めて小さい場合
D:硝子体嵌頓の確認/E:灌流吸引による水晶体皮質除去/F:眼内レンズの固定
③大きな後囊破損(硝子体脱出なし)
④大きな後囊破損(硝子体脱出あり)
後囊破損時の眼内レンズ挿入
①後囊破損時に囊内固定できる状態とは
②レンズの選択
③後囊破損状態におけるレンズ挿入の手順
A:ダイヤリング法/B:コンプレッション法
お助けQ&A
Q23 強膜ポートを経由して硝子体を後囊の下側から切除する方法と前房側から切除する方法の使い分けを教えてください.
Q24 術中の状態把握と合併症の早期発見の能力を上げるためには,どのような訓練をしたらよいでしょうか?
Q25 安全性を考慮して後囊破損時に眼内レンズを囊外固定する術者も多いと思います.囊内に固定したほうが良いことはわかっていますが,術者がどうしても囊内に固定できない場合はどうすればよいでしょうか?
索 引
【本書掲載の動画一覧】
full movie 著者の白内障手術手技
1-02-1 穴あきドレープの貼付方法
2-02-1 チストトームを用いたCCC
2-02-2 稲村鑷子を用いたCCC
2-02-3 池田鑷子を用いたCCC
2-03-1 ハイドロダイセクション(オーソドックス法)
2-03-2 ハイドロダイセクション(皮質分離法)
2-03-3 ハイドロダイセクション(二段階法)
2-03-4 ハイドロダイセクション(CCCジョイント法)
2-04-1 一手法による水晶体の核処理
2-04-2 水流をうまく利用する核処理
2-06-1 核分割フックがチップ先端をすり抜ける様子
2-06-2 ドーナツ処理
2-06-3 ピースメリーゴーラウンド法
2-07-1 連続的な皮質除去
3-02-1 核硬度の高い症例
3-03-1 小瞳孔例
3-03-2 ブラインドCCC
3-03-3 虹彩リトラクターの抜去
3-04-1 水晶体囊拡張リングの挿入