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免疫力を見極める 非結核性抗酸菌症(MAC症)診療

免疫力を見極める 非結核性抗酸菌症(MAC症)診療
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筆頭著者 徳田 均 (著)

JCHO東京山手メディカルセンター呼吸器内科

南山堂

電子版ISBN 978-4-525-98580-6

電子版発売日 2025年3月7日

ページ数 240

判型 B5

印刷版ISBN 978-4-525-26601-1

印刷版発行年月 2025年2月

DOI https://doi.org/10.15104/9784525266011

書籍・雑誌概要

近年,非結核性抗酸菌症(MAC症)は呼吸器科医の悩みの種となっている.ガイドラインに従って治療をしてもなかなか菌が根絶できず,ようやく長い治療を終えてもすぐに再発して戻ってくる.かと思えば,特段の治療をせずとも,10年以上も健康に過ごす患者さんもいる.空洞と見間違えやすい気管支拡張症,見落としやすい肺癌の陰影,関節リウマチとの合併症例……などなど.悩んでいるのは医師だけではない.患者は終わりの見えない長期服薬治療に不安を抱え,味覚障害などの副作用によって著しくQOLが損なわれている.そのような悩みに真摯に向き合い,医師・患者の両方から高い評価を得ている著者が,どのようにすればMAC症をコントロールできるのか理論化を試みる!1人1人の患者に丁寧に接することで見えてきたものとは? 免疫力,運動療法,結核病との比較……ガイドラインに書いていないけれども,本書を一読したあなたは思わず「その経験が自分にもある!」「それが知りたかった!」と膝を叩くことだろう.著者20年の経験とわが国の結核病学の蓄積に基づく,まさに集大成とも言うべき一冊.

目次

0章 NTM症の疫学,自然史,治療後の経過
一言まとめ:MACの一般人口での既感染率は高く,膨大な感染者の一部が健診で発見されていることがわが国の増加の主因であろう.本来穏やかな経過を取る予後のよい疾患で,その半数以上で治療を必要とせず,自然治癒率も高い.

1章 MAC症の多彩な病像―免疫の視点からの解析
一言まとめ:MAC症には,肺野に肉芽腫を形成しきわめて緩慢な経過を取りしばしば自然消退する「肉芽腫型」と,浸潤性病変・空洞を形成し肺を破壊していく「浸出型」があり,その予後は異なり,治療方針も異なってくる.

2章 治療開始時期―治療はただちに始めるべきか,当面経過観察でよいのか?
一言まとめ:肉芽腫型が主である場合まずは経過を観察し,進展増悪があれば治療するwatchful waitingが標準的な対応である.空洞がある場合ただちに治療を始めるべきと推奨されるがその科学的根拠はない.空洞のタイプにもよる.

3章 MAC症の治療:レジメン,治療期間
一言まとめ:「標準治療」のレジメン,期間には科学的根拠はない.特にRFPについてはさまざまな負の問題が浮上しており使用されない流れとなっている.治療期間についてもエビデンスはなく,肉芽腫型で副作用が強い場合短めにしても何ら問題はない.丁寧な観察が肝要.

4章 空洞の考え方
一言まとめ:MAC症の空洞は一律に強力な治療を行う必要はない.肉芽腫型の空洞は制御は容易なことが多く,一方周囲に浸出性病変を伴う空洞は強力な治療を必要とする.気管支の嚢状拡張を空洞と誤認しないことも大切である.

5章 治療困難例にどう対処するか?
一言まとめ:肉芽腫型で年の単位で拡大していく場合は,その都度の短期化学療法に加えて運動療法,ストレスの除去などの生活指導でよい.一方浸出型で週~月の単位で進行する場合は,多剤治療,必要に応じて短期間のステロイドも考慮する.

6章 再発にどう対処するか?
一言まとめ:MAC症の治療後再発は特にNB型で多い.その75%は再感染である.初回の化療を延長しても再発率は低下しない.再発は起こってからの治療でよい.そもそも観察だけでよい場合も多い.

7章 運動と栄養の重要性
一言まとめ:治療抵抗性,もしくは再発を繰り返す場合,薬物療法だけではこれを制御できない.規則正しい運動(ウォーキング)の慢性炎症性疾患における有効性は今や国際的に確立されている.栄養療法も劣らず重要である.

8章 MAC症の治療目標
一言まとめ:菌陰性化を治療の至上目標とすることは時にいたずらに患者を苦しめ,患者の幸福を目指すべき医療のありかたとは背馳する.癌などの他疾患と同様に,長期生存,良好な肺機能,良好なQOLを目標とすべきである.

9章 自然経過で治癒するMAC症
一言まとめ:MAC症の自然治癒は10~20%で起こる.それだけヒトはMACと共存する能力を持っていると言える.患者が本来の免疫力が発揮できるよう環境を整えることも医師の仕事の一つである.

10章 MAC症と気管支拡張症
一言まとめ:MAC症は高頻度に気管支拡張症を合併する.MAC症という病気の本質的な展開様式の一部であり,これに対して化療や宿主免疫は必ずしも有効でない.しかし適切に対処すれば恐れる必要はない.

11章 MAC症と肺癌
一言まとめ:MAC症には肺癌が合併しやすい.最大の問題は定期的な観察中に肺癌が出現してもMAC症陰影の中に紛れて発見が遅れがちということである.常にそれが起こりうるということを念頭に注意深い読影と対処が求められる.

12章 RAに合併するMAC症
一言まとめ:RA患者にはMAC症が多い.RAには高率に気道病変,間質性肺炎が合併しこれらがMAC症の母地となるためである.しかし適切に対処すれば予後は一般人と同じである.生物学的製剤など必要な治療は行ってよい.