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医療・ケア従事者のための
哲学・倫理学・死生学
筆頭著者 清水 哲郎 (著)
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-64946-9
電子版発売日 2022年5月16日
ページ数 284
判型 B5
印刷版ISBN 978-4-260-04946-7
印刷版発行年月 2022年4月
書籍・雑誌概要
哲学の扉を、開けてみる。
臨床では、常に「どうしたらよいか」を判断する場面に出合います。状況を適切に把握し、的確に実行に移す力が医療・ケア従事者に求められているのです。
自らの実践を振り返り、ケアする姿勢と専門的知識や個別状況を把握し整理するために。哲学と倫理学、そして死生学の新しい扉が開きます。
目次
序 人間の行動と言語
第1章 医療・ケア活動のために必要な力
1 人間の選択・行動の構造
1)〈状況に向かう姿勢〉+〈状況把握〉⇒ 選択・行動
2)臨床における行動の分析への適用
3)医療・ケア活動の構造分析への適用
2 状況把握 医療・ケアに必要な力①
3 状況に向かう姿勢 医療・ケアに必要な力②
第2章 言語と世界
1 ことばの〈意味〉をどう理解するか
1)言語ゲーム
2)語の意味はその用法
2 分類:類 ‒ 種関係
3 言語の「語ることで働きかける」機能
1)事実を記述する発話と行為を遂行する発話
2)遂行的発話の2つの区別(オースティン)
3)事実の記述のような形だが,遂行的なもの
第1部 事実と論理
第3章 事実
1 現在の直接明らかな事実
1)言葉の使い方・会話の成立に注目するアプローチ
2)現象として見る(それ以上の判断はしない)
3)直接明らかな他者の思い
2 現在の直接明らかではない事実の主張
1)遠方にある/ものの陰にある事物についての言明
2)小さ過ぎる事物についての言明
3 時間的に離れた時点における事実の主張
1)過去の事実についての言明
2)未来の事実? についての言明
4 可能性・必然性・偶然性
第4章 論理
1 〈言明〉の論理構造
1)ある個体を指して何かを述べる言明
2)普通名同士の関係を述べる言明
3)言明の主語・述語,量と質
4)1つの言明に基づく換質・換位による推理
2 複数の〈言明〉の間の論理的関係
1)1つまたは2つの言明から作られる言明の真偽
2)p→qの逆・裏・対偶
3)p→qと必要条件・十分条件
4)2つの言明の組み合わせから第3の言明を結論する
3 行動をもたらす論理
1)実践的三段論法
2)両刀論法(ジレンマ:dilemma)
3)ジレンマと実践的三段論法
第5章 科学的知識
1 世界についての知識と科学的知識
1)知識
2)科学的知識
2 科学的事実を見出す方法
1)現象と帰納法
2)観察された事実(現象)に基づいて,観察できない機序を推測する
3)科学的探求において前提されていることのうち,もっとも基本的なものは確認されず,ただ信じられているのみかどうか
第2部 市民の倫理/医療・ケア従事者の倫理
第6章 人間の行動と知・情・意
1 情と選択・行動
1)快・不快と情の働き
2)情が人を選択・行動へ向けること
2 理による情の陶冶⇒意志の成立へ
1)感情の陶冶のプロセス
2)ケアする姿勢の発現と成長
3)意志の成立
第7章 社会的要請としての倫理
1 倫理とは何か
1)倫理を定義する
2)倫理とその周辺
2 倫理原則だけでは〈倫理的に適切な行動〉は決まらない
3 倫理的に適切な選択・行動の成り立ち
第8章 倫理の成り立ちと広がり
1 倫理の構造と起源:〈皆一緒〉と〈人それぞれ〉
2 個人間の対応における姿勢は,人間関係の遠近に相対的
3 倫理は社会のあり方にも反映する〈社会倫理〉
4 医療・ケアに従事する者への社会的要請
1)日本における国による医療・ケア事業
2)医療におけるさまざまな社会的要請(倫理)のあり方
第9章 医療・ケア従事者の倫理
1 3倫理原則論:〈皆一緒〉と〈人それぞれ〉のブレンド
2 倫理原則をめぐるさまざまな立場
1)ビーチャム & チルドレスの4原則論
2)フライ & ジョンストン:4+2原則とケアリングの並存
3)倫理原則の性格:行為志向か姿勢志向か
3 倫理原則各論
1)人間尊重と自律尊重
2)与益原則
3)社会的適切さ原則
4 倫理的に適切な医療・ケアの選択・行動の構造
1)倫理的姿勢と医療・ケアの選択・行動
2)倫理原則と倫理的姿勢
第10章 ケアと徳の倫理
1 ケアする姿勢──医療者(看護職者)の倫理の起源
1)ケアとは
2)ケアの倫理の起源
2 〈ケア〉ということ
3 〈徳〉の倫理
1)〈徳〉とは
2)徳の倫理
4 優れた医療・ケア従事者の卓越性の核心にあるケアする姿勢
1)優れた医療・ケア従事者
2)ケア・スピリット
第3部 臨床の倫理
第11章 最善を目指すということ
1 〈いのち〉の2つの層──生物学的生命と物語られるいのち
2 クオリティ・オブ・ライフ=QOL
1)QOLとは何か
2)医療の目標と身体環境
3 益と害のアセスメント/相応性原則
第12章 意思決定プロセス
1 インフォームド・コンセントと説明 ‒ 同意モデル
2 情報共有 ‒ 合意モデル
1)決定の分担論から共同決定論へ
2)情報共有 ‒ 合意モデルが伴うもの
3 合意を目指す検討:意思決定支援のプロセス
1)医学的妥当性の判断
2)本人の人生と価値観⇒個別の意向
3)本人の人生・価値観による最善と医学的妥当性の間
第13章 臨床の倫理的事例検討
1 ジレンマの把握をベースにした検討
1)倫理的ジレンマに対する対処の基本(ジレンマ構成法)
2)ジレンマのさまざまなタイプ
3)ジレンマが解消しない場合
2 臨床倫理検討シートを使った検討
1)事例提示シート
2)益と害のアセスメントシート
3)カンファレンスにおける検討とカンファレンス用ワークシート
4)モデル事例の検討
第4部 人間の生と死
第14章 死生の文法と文化
1 〈死〉の理解
1)日本語における死の語り方
2)身体の死と人の死の二重の把握
2 死とはどういうことか:死者の世界の成立
1)〈別世界移住〉の思想
2)死の説明の諸系譜とその並存
第15章 死に向かって生きる人間
1 死に向かう心
1)死に直面する者の〈希望〉
2)死を受容するということ
2 人生の終りに向かう意思決定・心積りとその支援
1)厚生労働省ガイドライン2018改訂版が示す意思決定プロセス
2)さまざまな意思決定支援
3)ACPの成果物
第16章 エンドオブライフ・ケア
1 〈エンドオブライフ・ケア〉とは
1)ターミナル・ケアからエンドオブライフ・ケアへ
2)生と死の並存とEOLCが目指すこと
2 死に至るまでできる限り良く生きるために
1)人生のために生命を支える
2)人生にとって最善の選択肢が縮命を伴う時
3 死に至るまで尊厳を保つために
1)尊厳と尊厳ある死
2)スピリチュアル・ケア:尊厳を保つことを目指して
column
「ある/ない」と「いる/いない」
具象名詞・形容詞 ‒ 抽象名詞
未来の事実についての言明は,真か偽か,現在すでに決まっているでしょうか
倫理が成立するために必要な力がホモ・サピエンスにはある
感染拡大防止のための「自粛」の倫理
正義の倫理/ケアの倫理
〈向き合う〉ケア ‒ 〈同じ方向に向かう〉ケアのために
泣血哀慟歌
死生学とは
愛という名の支配
あとがき
索引