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≪シリーズ ケアをひらく≫

中動態の世界

意志と責任の考古学

中動態の世界
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≪シリーズ ケアをひらく≫

筆頭著者 國分 功一郎 (著)

医学書院

電子版ISBN 978-4-260-63157-0

電子版発売日 2017年5月29日

ページ数 344

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-260-03157-8

印刷版発行年月 2017年4月

DOI https://doi.org/10.11477/9784260631570

書籍・雑誌概要

自傷患者は言った。「切ったのか、切らされたのかわからない。気づいたら切れていた」依存症当事者はため息をついた。「世間の人とはしゃべっている言葉が違うのよね」――当事者の切実な思いはなぜうまく語れないのか?語る言葉がないのか?それ以前に、私たちの思考を条件づけている「文法」の問題なのか?若き哲学者による《する》と《される》の外側の世界への旅はこうして始まった。ケア論に新たな地平を切り開く画期的論考。

目次

プロローグ-ある対話

第1章 能動と受動をめぐる諸問題
 1 「私が何ごとかをなす」とはどういうことか
 2 「私が歩く」と「私のもとで歩行が実現されている」は何が違うのか
 3 意志と責任は突然現れる
 4 太陽がどうしても近くにあるように感じられる-スピノザ
 5 文法の世界へ

第2章 中動態という古名
 1 「中動」という名称の問題
 2 アリストテレス『カテゴリー論』における中動態
 3 ストア派文法理論における中動態
 4 文法の起源としてのトラクス『文法の技法』
 5 エネルゲイアとパトスをめぐる翻訳の問題
 6 パトスは「私は打たれる」だけではない
 7 メソテースをめぐる翻訳の問題-四つの例
 8 奇妙な起源

第3章 中動態の意味論
 1 中動態に注目する諸研究-第三項という神秘化
 2 中動態の一般的定義-なぜ奇妙な説明になるのか?
 3 中動態を定義するために超越論的であること
 4 バンヴェニストによる中動態の定義
 5 中動態の一般的な定義との関係
 6 受動態、能動態との関係
 7 「中動態」という古名を使い続けること

第4章 言語と思考
 1 ギリシア世界に意志の概念はなかった
 2 ある論争から
 3 『カテゴリー論』読解への貢献-デリダの批判(a)に対して
 4 思考の可能性の条件としての言語-デリダの批判(b)に対して
 5 哲学と言語-デリダの批判(c)に対して

第5章 意志と選択
 1 アレントの意志論
 2 アリストテレスの「プロアイレシス」
 3 プロアイレシスは意志ではない
 4 意志と選択の違いとは何か?
 5 意志をめぐるアレントの不可解な選択
 6 カツアゲの問題
 7 「する」と「させる」の境界
 8 権力関係における「能動性」
 9 アレントと一致の問題
 10 非自発的同意の概念
 11 アレントにおける政治、意志、自発性

第6章 言語の歴史
 1 動詞は遅れて生じた
 2 動詞の起源としての非人称構文
 3 中動態の抵抗と新表現の開発
 4 出来事の描写から行為の帰属へ
 5 日本語と中動態
 6 自動詞と受動態
 7 「自然の勢い」としての中動態
 8 中動態をめぐる憶測
 9 抑圧されたものの回帰

第7章 中動態、放下、出来事-ハイデッガー、ドゥルーズ
 1 ハイデッガーと意志
 2 ハイデッガーの意志批判
 3 「放下 Gelassenheit」
 4 ドゥルーズ『意味の論理学』-その古典的問題設定
 5 出来事の言語、動詞的哲学
 6 動詞は名詞に先行するか?

第8章 中動態と自由の哲学-スピノザ
 1 スピノザの書いた文法書『ヘブライ語文法綱要』
 2 動詞の七つめの形態-文法論
 3 内在原因、表現、中動態-存在論(1)
 4 変状の二つの地位-存在論(2)
 5 変状の中動態的プロセス-倫理学(1)
 6 スピノザにおける能動と受動-倫理学(2)
 7 能動と受動の度合い-倫理学(3)
 8 自由について

第9章 ビリーたちの物語
 1 メルヴィルの遺作
 2 キリスト、アダム
 3 ねたみの謎
 4 歴史
 5 彼らはいったい誰なのか?
 6 中動態の世界に生きる


あとがき

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