胸部外科 74巻1号 (2021年1月)

特集 再発・同時異時多発肺癌に対する外科治療戦略とアウトカム

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肺癌の手術件数が増加しつつあった1970年代後半あたりからしばらくの間,手術術式としては侵襲のきわめて大きな標準開胸による肺葉切除か片肺全摘除のみが行われていた.加えて現在に比して進行した病変の頻度が高かったこともあり,この選択肢をとりえないものについては手術不能として放射線か抗癌薬による治療を選択する以外に道はなかった.放射線治療や薬物療法も今とは比較にならぬほど限られたものであり,外科治療も含めて肺癌の予後は悲惨といえるほどわるいものであった.当然のことながら,本特集テーマのような多発病変に対する複数回の手術や再発に対する手術などは想像だにできないレベルの医療であり,肺癌に対する外科治療はいわば一発勝負とでもいうべきものであった.そのような時代を経験した身としては,今回のようなテーマで特集を組めるようになったことにあらためて隔世の感を覚える次第である.

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CTの発展により,すりガラス状陰影(GGO)を示す結節がみつかる機会が増加している.GGO病変は一定の経過観察期間をおいて,大きさの増大や陰影の濃度上昇などの所見があれば,生検または手術により確定診断を得るようにすすめられている.しかしながら,このようなGGO病変は,手術中に肺の表面から視認しにくく,触診しても同定するのが困難な場合がある.そこでわれわれは,手術中に視診・触診で同定困難と予想される病変に対して,術前に経皮的CTガイド下ethyl ester of iodinated poppy-seed oil fatty acid(リピオドール)マーキング(以下,リピオドールマーキング)を行い,手術中にX線透視下で病変を同定して肺切除術を行ってきた1).

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近年,高分解能CTの普及や画像診断能力の向上などに伴い,多発肺癌の検出頻度が増加している.多発肺癌においては,腫瘍の個数や局在に応じ,根治性を確保しつつ,肺機能の温存を図った適切な術式を症例ごとに考慮しなければならない.われわれは,当院での同時性多発肺癌に対する外科治療戦略とアウトカムについて検討したので報告する.

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肺癌術後治療成績の向上や平均寿命の高齢化がすすみ,肺癌手術後の第2肺癌に遭遇することはまれではない.特に,すりガラス状陰影(GGO)を主体する予後良好な肺癌は,多発する傾向がみられる.異時性多発肺癌患者には高齢者が多く,肺癌手術の既往を有するケースも決してまれではない.高齢者は,さまざまな併存症を有し,低肺機能のため,標準治療である肺葉切除が困難なことも少なくない1,2).超高齢化を迎えるわが国では,今後ますます多発肺癌症例が増加することが考えられ,さまざまな治療戦略を講じる必要がある.そのため,当施設で経験した異時性多発肺癌症例について臨床・病理学的に解析し,今後の治療戦略について検討した.

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肺癌切除例の予後の向上に伴い,多発肺癌の発生頻度は増加傾向にあると報告されている1).多発肺癌は発見時期により同時性または異時性に分けられるが,診断と治療法に明確な指針がなく,治療戦略の決定に苦慮することがある.このうち診断については,肺癌術後の異時性多発肺癌(第2癌)の場合,肺転移との鑑別診断は病理学的検討を行っても困難な場合が少なくない.一方で治療に関しては,患者の高齢化や肺切除後のために呼吸機能が低下している症例も多く,機能温存の目的で縮小手術を選択せざるをえない場合にも直面する.より適切な異時性多発肺癌の診療を行うためには,異時性多発肺癌に対する現状把握と治療成績の検証が必要である.

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肺葉切除や区域切除といった解剖学的切除後に同側に肺癌が発生した場合,小型の末梢病変であれば部分切除を選択できるが,病変が中枢に存在する場合には再度の解剖学的切除が必要となり,手術の難度が高くなる.解剖学的切除を行った場合には,手術によって失われる呼吸機能も大きく,放射線治療や薬物療法と比較した場合の治療効果や,腫瘍学的根治性と予測残存肺機能をふまえた適切な術式選択の判断も要求される.われわれは,解剖学的切除を行った肺癌の同側再発あるいは第2癌に対して,再度の解剖学的肺切除を行った症例の成績について検討した.

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近年の高齢化の進行に加え,画像診断技術の向上と普及により,同時・異時性に多発陰影を認める機会が増加し,多発肺癌の発生頻度は増加傾向にあるといわれている.しかし患者の高齢化に伴い背景疾患や低肺機能症例も多く,手術適応や術式の選択では,根治性を十分に考慮するとともに,術後残存肺機能や生活の質も加味したうえで術式を決定しなければならない.そこでわれわれは,当科で経験した多発肺癌症例に対する胸腔鏡手術(TS)の治療内容および成績を検討し,考察する.

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近年のCT検査やPET検査などの画像診断技術の進歩や,検診率の向上などに伴い,多発肺癌(同時性・異時性)を認める機会が多くなった.肺癌切除後の結節に対しては肺内転移・再発や二次性原発性肺癌の鑑別がむずかしく,臨床経過や結節の性状(すりガラス状陰影の存在など)で判断して治療方針を決定することが多いが,最終的な診断には切除して第1肺癌との病理学的鑑別が必要である.

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検診の普及と治療法の進歩により高齢化がすすんだ現在,多発肺癌は増加傾向にある.多発肺癌とは同時性もしくは異時性に転移でなく複数個発生する原発性肺癌のことであり,原発性肺癌患者の約10~22%に存在するといわれている1,2).しかし,多発肺癌は転移との診断がいまだに困難である.組織型は腺癌が多く,その発生にはEGFR遺伝子変異肺癌が多いことから,現在進歩が著しい化学療法と手術の適応にも変化がみられる3).末梢発生の多発肺癌の外科的治療は,同側性肺癌であれば多くの場合,残存肺全摘除を除き手術が特に問題になることはないが,両側性多発肺癌の治療は予後と呼吸機能の観点からいまだ課題が多い.われわれは,当院での症例を対象として外科治療戦略を後方視野的に検討した.

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近年の画像診断の進歩や胸腔鏡手術の普及による手術侵襲の低下,さらには肺癌の全身治療の進歩などにより,同時性・異時性を問わず肺癌を二期的に切除する機会が増加している1).しかしながら,手術患者が高齢化しており低肺機能症例も多く,手術適応や術式の選択に一定の基準がないため,各施設で症例ごとに治療方針が決定されているのが現状である2).また,肺葉切除術後の対側肺癌もしくは二次肺癌に対する肺葉切除術の肺機能適応基準を厳しくする必要性が示唆されており3),多発肺癌症例においては早期・晩期術後合併症への注意が必要である.われわれは二期的に手術加療を施行した多発肺癌症例の治療成績を検討し,多発肺癌の外科治療戦略を考察する.

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高齢化社会が進行したことや画像診断の発達により,早期発見・術後長期生存例が増えたことが原因なのか,肺癌の外科臨床において,多発肺癌のため同一の患者に複数回の肺手術を施行する事例は増えていると感じられる.しかし多発肺癌/再手術に関して,適切な術式選択や予後についてはまだ不明の点も多い.

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肺癌の術後再発や経過観察中に発生した第2癌に対する治療方針は,腫瘍の局在,呼吸機能をはじめとした耐術能,薬物療法に対する感受性の有無などを考慮したうえで決定される.病変が胸腔内に限局しており,耐術能が保持されている症例においては,根治を目的とした手術が治療の選択肢の一つとなる.同側の再手術は特に肺門部の癒着のため手術の難度が高いが,中でも残肺全摘除術(CP)は手術侵襲が大きく,術後合併症率や死亡率が高い術式である.そのため,手術適応を決定する際には慎重な判断が求められるが,CPにより長期生存を得られる症例もある.肺癌再発に対するCPの手術成績について,当科におけるCP症例を検討した.

まい・てくにっく

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大動脈切開は通常の手縫いによる大動脈弁置換術と同様の斜切開(ホッケースティック型大動脈切開)で行う.弁のサイズはMagna Easeと同様に19~27 mmであり,狭小弁輪例では19 mmが入らないことを想定して弁輪拡大を視野に入れた切開線を考慮する.

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筆者がはじめて指導医の存在なく執刀した気管分岐部切除再建を伴う肺切除術である.

REVIEW

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分子標的治療薬や免疫療法など,さまざまな治療方法が使用できるようになった現在でもなお,進行肺癌の予後は不良である.肺癌の診療において早期発見はやはり重要であり,検診の果たすべき役割は大きい.本稿の読者は,胸部外科の臨床医が多いと思われるので,がん検診が必ずしも専門ではない読者も多いと推定される.そのため日本で行われている肺がん検診の仕組みについて概説したうえで,現状での問題点と今後の展望について述べたい.現在日本で肺がん検診として広く行われている方法は,胸部X線検査と喀痰細胞診の併用法である.最近,一部で胸部CT検査を実施するところが出てきた.

胸部外科医の散歩道

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心臓外科医を志し40年,その過程で様々な土地を散歩し過ごさせてもらった.本稿では,その思い出や風景の中から四方山話を綴らせていただく.

基本情報

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胸部外科
74巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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