肺癌の手術件数が増加しつつあった1970年代後半あたりからしばらくの間,手術術式としては侵襲のきわめて大きな標準開胸による肺葉切除か片肺全摘除のみが行われていた.加えて現在に比して進行した病変の頻度が高かったこともあり,この選択肢をとりえないものについては手術不能として放射線か抗癌薬による治療を選択する以外に道はなかった.放射線治療や薬物療法も今とは比較にならぬほど限られたものであり,外科治療も含めて肺癌の予後は悲惨といえるほどわるいものであった.当然のことながら,本特集テーマのような多発病変に対する複数回の手術や再発に対する手術などは想像だにできないレベルの医療であり,肺癌に対する外科治療はいわば一発勝負とでもいうべきものであった.そのような時代を経験した身としては,今回のようなテーマで特集を組めるようになったことにあらためて隔世の感を覚える次第である.