CLINICAL CALCIUM 28巻2号 (2018年2月)

特集 生体骨イメージング最前線 ~新しい創薬に向けて~

Preface

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 「見えないものを見ようとする技術開発」が有史以来,常に医学・生物学を牽引してきたことは論をまたない。特に近年は,蛍光イメージング技術の急速な進歩により,生体内の奥深くの現象を単一細胞レベルで,かつリアルタイムで高精細に解析することが可能となってきた。筆者らのグループを中心に,本技術を骨組織の解析に応用する動きが広がり,いまや骨組織内の様々な細胞種の生きた動態やそれらの相互作用によって担われる生体現象を手に取るように理解することができるようになってきた。さらに最近では,イメージング画像データを定量化する方法論も成熟してきており,本技術を種々の薬効評価に活用し,またイメージングによって明らかになった骨組織の細胞動態を標的とした新たな治療法開発も視野に入ってきた。本稿では,生体骨イメージングの発展の歴史を紐解くとともに,この技術を基に今後どのような次世代の創薬が展開されるのか,その未来予想図についても議論したい。

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 骨組織内には,リモデリングに関わる破骨細胞や骨芽細胞,骨髄内で分化・成熟を遂げる単球・顆粒球・リンパ球,その他の間葉系細胞や造血幹細胞など,多種多様な細胞が存在し,お互いがネットワークを形成することによって,日々多彩な生命現象が営まれている。近年,二光子励起イメージング技術が発展し,個体を生かしたままで生体骨組織内の細胞の挙動をリアルタイムで観察することが可能となり,骨組織内の複雑な細胞動態ネットワークとその制御機構が明らかになってきている。  本稿では,生体骨イメージングの基礎とその応用を概説する。

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 骨組織には,骨代謝に関わる破骨細胞や骨芽細胞,骨細胞の他,骨髄内で分化・成熟を遂げる血球系細胞,その他の間葉系細胞や神経細胞など,多種多様な細胞が存在する。近年,「蛍光イメージング技術」の進歩により,骨組織を生きたまま観察することが可能となり,細胞の「形態」だけでなく,時間軸をもった「動態」を解析することが可能となった。我々は,低侵襲で組織深部を観察することが可能な「二光子励起顕微鏡」を改良し,マウスを生かしたままで,骨組織内の細胞の生きた動きをリアルタイムで観察するイメージング方法を確立した。本稿では,二光子励起顕微鏡の原理,“骨のin vivoイメージング”の方法論,取得したイメージング画像に定量性を付加していくための編集・解析の仕方などイメージングの方法論全般について概説する。

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 生体分子を直接可視化して示すためのツールとして蛍光を発する分子は広く用いられている。蛍光プローブは,合理的な設計に基づき“見たい”機能を付与できる利点がある。生体骨をイメージングする蛍光プローブの場合,投与時に特異的に骨組織に送達される必要がある。近年,破骨細胞活性を検出するために開発された蛍光プローブは,骨を溶かす酸に応答して光る性質,骨組織への送達能,およびレーザー耐性を有している。この蛍光プローブを用いることで,生体内で破骨細胞が骨を溶かしている様子を長時間イメージングすることが可能となった。

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 骨組織は固い石灰質に囲まれており,その内部を生きたまま観察することは困難であった。しかし近年の顕微鏡技術や蛍光プローブ技術の進展に伴い,骨の細胞社会を形成する様々な細胞の多様な活動を見ることが出来るようになっている。その一方で,データの量的な増大と取得される情報の質の多様化や複雑化は,人力による定量的な解析を困難にしており,顕微鏡画像の自動処理やデータ解析についての情報科学的な方法論の開発が期待されている。  本稿では,生物学と情報科学の境界領域であるバイオイメージ・インフォマティクスという研究分野を紹介し,その後,生体骨イメージングデータの解析のための課題と基礎的な画像処理技術を概説する。

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 二光子励起顕微鏡を用いた蛍光イメージング技術が発達し,生体内で様々な発生過程や病態における様々な細胞の動態をin vivoで観察することができるようになってきた。この観察のためには生体内の細胞を生きたままの状態で特異的に蛍光標識する必要がある。その方法は遺伝子操作,化学蛍光プローブや蛍光標識抗体などが用いられる。本稿では,細胞特異的に内因性に蛍光タンパク質を発現させる遺伝子改変マウス(レポーターマウス)の作出法について解説する。マウスの発生工学技術やバイオリソースの現状から,トランスジェニック法,ノックイン法そしてCre/loxPの組み換え法,CRISPR/Cas9法によるゲノム編集がレポーターマウスの作出方法として挙げられる。これらの方法の特徴とその応用の可能性について解説する。

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 破骨細胞は,単球系血液細胞から分化・成熟する多核巨細胞であり,骨吸収という特殊な機能を持つ細胞である。我々は,二光子励起顕微鏡を駆使して,個体を生かしたまま生体骨・関節組織内部をリアルタイムで観察するライブイメージング系を確立した。本技術を用いて,骨・関節内での生きた破骨細胞による骨破壊過程を可視化することに成功し,破骨細胞による骨吸収制御メカニズムを解明するとともに,生体内において生物学的製剤が炎症によって誘導された破骨細胞に及ぼす効果を明らかにした。本稿では,これらの研究成果について概説する。

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 間葉系細胞である骨芽細胞は,骨基質を合成し石灰化を行うことで骨形成を担っている。しかし骨芽細胞が実際にどのように骨形成を行うのかに関しては明らかとなっていない。特に,固定標本で観察することが多い骨組織は,細胞の「動き」の情報を得ることが困難であり,骨ホメオスタシスにおける骨代謝関連細胞の動態については未だ大部分が謎に包まれている。近年発達してきた二光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング技術を用いると,生体組織を低侵襲で深部まで観察でき,組織固定の過程を経ずに「生きたまま」の骨内膜面を観察することができる。そのため,この技術は硬組織の観察において,新しい知見を得られる非常に有用なツールと言える。本稿では,当教室で行なっている骨芽細胞の生体イメージング(in vivo,in vitro)について紹介するとともに,過去の報告を含め骨芽細胞イメージング最前線について概説する。

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 骨細胞は,骨を構成する細胞の大多数を占める一方,骨基質に埋没して存在するのみの細胞として考えられてきた。しかし近年,骨細胞の持つ多彩な機能が徐々に明らかにされ,骨自身が骨リモデリングの制御を担うばかりか,さらには多臓器とも連関する内分泌器官であると認識されるようになった。骨は運動器としてのみならず個体レベルでの解釈が必要とされつつある。しかし従来の解析手法では,硬い骨組織内に存在する骨細胞のリアルタイムな機能評価は困難であった。今回,二光子励起顕微鏡を用いて,生体内における骨組織内の骨細胞と,骨小腔-骨細管ネットワークのイメージングを試みたので紹介する。

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 造血幹細胞は,骨髄内でニッチと呼ばれる特有の微小環境において維持されていると考えられている。近年の生体イメージング技術の発達により,マウス骨髄内の細胞を生きた状態で観察できるようになってきた。造血幹細胞の骨髄内での動態や,これらを支えるニッチとの経時的な位置関係を明らかにすることにより,造血はどのように制御されているのかを解明できるツールとなり得る。さらに,この技術を白血病細胞研究に進展することにより,その維持機構の解明など,白血病治療開発の発展につながる知見が得られる強力な手段となることが期待される。本稿では,造血幹細胞及び白血病イメージングに関する最近の知見を概説する。

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 現在,様々な骨吸収抑制薬が開発され臨床現場で汎用されているが,薬剤が生体骨組織内で実際にどのような効果を示すのか,生体内における薬理作用を細胞レベルで解析した報告は少ない。我々はこれまで,生体骨イメージング技術を用いて,生体骨組織内における破骨細胞の動態を可視化し,活性型ビタミンD製剤やビスホスホネート製剤をはじめとした骨吸収抑制薬の薬効を明らかにしてきた。本稿では,これらの研究成果について概説する。

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 副甲状腺ホルモン(PTH)製剤テリパラチドは骨粗鬆症治療薬として広く使用されている骨形成促進薬である。この薬剤は,生体内の骨リモデリングを制御することで骨形成促進作用を発揮すると考えられているが,その詳細なメカニズムは明らかではない。我々は最近,骨代謝の中心的な役割を担う成熟破骨細胞と成熟骨芽細胞の生体イメージング解析を行い,テリパラチドが両者の三次元的位置関係や細胞間相互作用をダイナミックに変化させることを明らかにした。これらの解析により,骨代謝に関わる細胞間ネットワークの理解がさらに進むことが期待される。

理解を助けるトレーニング問題

画像解析に関して 瀬尾茂人
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(2018年2月号特集:「生体骨イメージング最前線~新しい創薬に向けて~」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

連載 ミニ連載Ⅱ.エクソソーム:老化関連疾患の分子機構から体液診断まで

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 糖尿病性腎症などの腎疾患における早期発見,予後予測,重症度評価あるいは治療モニタリングに必要な,低侵襲性のバイオマーカーの開発が強く求められている。そのような背景の中で,尿中におけるエクソソームなどの細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)に含まれるタンパク質やmicro RNA(miRNA)などに関する検討が,世界的に行われている。本稿では,近位尿細管エンドサイトーシス受容体メガリンを含め,糖尿病性腎症などの腎疾患において新規のバイオマーカーとして報告されている尿中EVsマーカーについて概説する。

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1.骨産生Lipocalin2によるMC4R依存的な食欲抑制  2.副甲状腺ホルモンは骨髄間葉系細胞の運命を決定する

バックナンバー

特集予告(3月号、4月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
28巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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