CLINICAL CALCIUM 25巻9号 (2015年8月発行)

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特集　「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」をめぐって

Preface

巻頭言～ガイドライン改訂のポイント～宗圓聰 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1271-1271

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Review

骨粗鬆症治療の全体像と治療目的萩野浩 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1273-1277

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　骨粗鬆症の治療をする目的は骨折の抑制であり，骨粗鬆症治療は骨の健康維持を通じて骨格全体の健康維持に中心的な役割を果たす。骨粗鬆症の治療では食事療法や運動療法は基礎療法と位置付けられ，薬物療法が中心である。加齢にともなって有病率が高まる本疾患では治療開始基準が必要であり，骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインでは診断基準とは別に骨折リスクによる薬物治療開始基準が定められているが，費用対効果に関しては十分なデータがないため加えられておらず，今後の課題である。

原発性骨粗鬆症の診断基準と薬物治療開始基準細井孝之 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1279-1283

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　骨粗鬆症の診断は骨密度の評価と鑑別診断・除外診断に基づく。骨折を起こしていない状態での骨強度の臨床的指標として骨密度の値がもっとも有用であり，初発骨折の予防には骨密度測定が欠かせない。一方，骨粗鬆症による骨折，特に椎体骨折や大腿骨近位部骨折をすでに起こした患者における再骨折リスクは骨密度で補正しても臨床的に有意なものである。このため，これらの骨折既往を持つ患者は鑑別診断・除外診断の上で原発性骨粗鬆症と診断する。他の骨粗鬆症性骨折を既往として持つ場合には，骨密度測定結果を合わせて診断する。このようにして診断された場合に加えて，「骨量減少」レベルでの骨密度であっても大腿骨近位部骨折の家族歴やFRAX®（Fracture Risk Assessment Tool）の値を勘案して薬物治療の対象者を選定する。

骨粗鬆症の薬物治療山内美香 , 杉本利嗣 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1285-1292

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　『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』の薬物治療の項目における主な改訂点は，2011年版以降承認された薬剤であるイバンドロネート，テリパラチド酢酸塩（週１回製剤），デノスマブが加えられ，既存薬剤の新たな剤形についての情報が加わったことである。そして，各薬剤についての「評価と推奨」が「有効性の評価」と改変された。各薬剤の選択については，各薬剤の効果のエビデンスをふまえた上で，個々の年齢や骨折リスク，病態に応じて決定する。各薬剤の使い分けや併用療法については，エビデンスの集積が待たれるところであるが，テリパラチド製剤治療後の骨吸収抑制薬による逐次療法については推奨されている。

Seminar

細胞生物学の観点からみた骨粗鬆症の成因古賀貴子 , 高柳広 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1293-1300

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　骨組織は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返して，適切な量と質を維持している。この骨の新陳代謝機構は骨リモデリングとよばれる。骨吸収と骨形成は，外界からの物理的な力やホルモン，骨組織に存在する細胞同士の相互作用によって巧妙に制御されている。加齢や生活習慣病，種々の疾患は骨の恒常性を左右し，骨代謝バランスの崩壊を招く。骨粗鬆症はその代表的疾患であり，骨吸収が骨形成に上回ることで，骨密度・骨質が低下し，容易に骨折する脆弱な骨になる。骨リモデリングを制御する細胞の分化や機能，そして細胞同士の情報伝達を理解することは，骨粗鬆症の治療法の開発に重要である。

骨強度低下のメカニズム斎藤充 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1301-1306

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　骨粗鬆症は，骨密度の低下と骨質（微細構造，材質特性）の劣化により骨強度が低下する疾患である。しかし，骨粗鬆症の患者集団は多様であり，骨密度の低下や骨質の劣化は一様ではない。骨密度は，少年期から思春期にかけて高まるが，成人期以降，加齢や閉経に伴い，破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回り，骨密度は低下する。骨質因子である微細構造は主に骨リモデリングによって規定されるが，材質特性は，それ以外にも骨基質を合成する細胞機能や骨基質の周囲の環境（酸化ストレス，糖化ストレス），また，ビタミンＤやビタミンＫの充足状態により変化する。骨強度は，骨密度と骨質により規定されるため，そのどちらかが低下しても骨強度は低下し，骨折リスクは高まる。

臓器相関からみた骨粗鬆症の病態竹田秀 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1307-1312

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　骨と臓器間のネットワークの解明により，骨以外のさまざまな臓器が骨代謝調節に関与していることが明らかとなった。なかでも，神経系による骨の代謝調節や，骨によるリン代謝や糖代謝の調節などに関して幅広い知見が得られている。また，糖尿病や慢性閉塞性肺疾患（COPD）などでは骨粗鬆症の有病率が高いことなど，骨以外の臓器の異常が骨粗鬆症発症の要因となっていることが明らかとなった。このように，骨粗鬆症は，単なる骨の病気から，個体全体の代謝異常に基づく骨の病変とその概念が変わりつつある。

ロコモティブシンドロームからみた骨粗鬆症石橋英明 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1313-1318

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　高度に高齢化が進行する日本において，健康寿命の延伸という観点から骨粗鬆症とロコモティブシンドローム（ロコモ）の克服はともに重要な課題である。骨粗鬆症はロコモの重要な構成疾患である一方で，ロコモは転倒リスクに影響するため，その対策は骨折予防に重要である。実際に，ロコモの評価法や対策は，転倒リスクの評価と予防に関わる要素が大きい。骨折低減のためには，骨粗鬆症の治療率の向上とともに，ロコモの普及と対策が重要である。

Topics

生活習慣病関連骨粗鬆症：糖尿病山本昌弘 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1319-1327

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　メタ解析により，生活習慣病の代表的疾患である２型糖尿病は骨密度から予測される以上に骨折リスクが高いことが示された。骨密度では骨強度の推定が困難であることから，糖尿病の骨粗鬆症は，骨質の低下による骨脆弱性の亢進を特徴とする。骨密度と独立した骨折リスクとの関連性から，骨コラーゲンの過剰糖化や，骨形成刺激の低下，骨代謝回転の低下，および細くて多孔化した骨形状のような，骨の材質的・構造的変化が骨質劣化の病態と考えられている。糖尿病患者の骨折予防効果のある骨粗鬆症治療薬は不明だが，骨代謝への影響を考慮して糖尿病治療薬を選択し，良好な血糖状態を維持することが骨折予防に有効である可能性がある。

生活習慣病関連骨粗鬆症：CKD 山田真介 , 稲葉雅章 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1329-1338

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　慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD）を合併する骨粗鬆症患者は非常に多く，CKD合併により骨折リスクが有意に上昇することも報告されている。しかし，骨粗鬆症治療薬のほとんどが腎排泄性ということもあり，CKD患者に対する臨床的有効性や安全性が確立された薬剤は，現在のところ存在しない。本稿では，CKDと骨粗鬆症の関連性，およびCKD合併骨粗鬆症患者の診療で留意すべき点について，文献的考察を交え概説する。

生活習慣病関連骨粗鬆症：その他の生活習慣病山内美香 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1339-1346

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　２型糖尿病と慢性腎臓病以外の生活習慣病についても，骨代謝に影響を及ぼす可能性が報告されてきている。中でも，慢性閉塞性肺疾患（COPD）による骨密度低下と骨折リスクの上昇についてはエビデンスが集積されつつある。COPDでは女性のみならず男性でも骨折リスクが高まり，ステロイド投与とは独立したリスク因子であるとされる。また，椎体骨折による円背は呼吸機能低下にさらなる悪影響を及ぼすことから，性別に関わらずCOPD患者では骨粗鬆症の評価が推奨される。脂質異常症と高血圧については様々な因子が関与することもあり，疾患自体の骨への影響については一定の見解は得られていない。

Therapy

治療関連骨粗鬆症：ステロイド鈴木康夫 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1347-1356

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　骨粗鬆症は長期ステロイド（GC）治療における最も重要な副作用の１つである。原発性骨粗鬆症に比べて，骨折閾値が高く，投与開始後の急激な骨量減少に対する一時予防が重要であり，各国よりステロイド性骨粗鬆症（GIO）管理ガイドラインが発表されている。10年ぶりに改訂された日本骨代謝学会GIOの管理と治療ガイドラインは，国内のGIOのコホートの解析により独自の骨折危険因子を抽出して，初めてスコア法を薬物療法開始の基準判定に導入した。既存骨折あり，年齢≧65歳，ステロイド投与量≧7.5 mg/日，低骨密度＜70 ％は単一でも高い危険因子であり，１つでもあれば治療開始の目安となる。さらに，複数の危険因子のスコアの合計で評価することにより，単一因子では評価できない複合的なリスクを評価できる特徴がある。　薬物療法の推奨は，国内で骨粗鬆症治療薬として認証されている薬剤の中から，骨密度減少と骨折の抑制効果があり，かつ一次予防と二次予防の両者において有効性が確認されている薬剤を優先した。第１選択薬としてアレンドロネートとリセドロネートが推奨されている。

治療関連骨粗鬆症：性ホルモン低下療法髙橋俊二 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1357-1365

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　乳癌および前立腺癌は性ホルモン依存性癌であり，女性ホルモンあるいは男性ホルモン抑制療法が標準治療であるが，その重要な副作用として骨量減少・骨粗鬆症が問題になっている。現在のエビデンスをまとめると，〈1〉乳癌，前立腺癌に対する内分泌療法は有意な骨密度低下を伴う。〈2〉乳癌に対するアロマターゼ阻害薬（AI）については有意な骨折の増加を伴い，前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法（ADT）についても骨折の増加を伴う可能性が高い。〈3〉乳癌内分泌療法中の患者にビスホスホネートおよびデノスマブを投与することにより骨量は増加する。前立腺癌に対するADT療法中の患者ではビスホスホネート，デノスマブ，SERM（ラロキシフェン，トレミフェン）の投与により骨量が増加した。〈4〉乳癌に対するAI中の患者においてビスホスホネートおよびデノスマブが，前立腺癌に対するADT治療中の患者においてトレミフェンおよびデノスマブが骨折リスクを減少させる。

治療関連骨粗鬆症：その他の治療薬鈴木敦詞 , 植田佐保子 , 垣田彩子 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1367-1372

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　骨粗鬆症の有病率の高まりを受けて，合併する慢性疾患治療薬の骨代謝への影響が注目されている。抗糖尿病薬であるチアゾリジン薬がその代表である。さらに降圧薬，脂質異常症治療薬，選択的セロトニン再取り込み阻害薬，抗けいれん薬，ループ利尿薬，プロトンポンプ阻害薬など骨代謝と関連する薬剤は多岐にわたる。糖質コルチコイドに関しては国際的にもガイドラインが定められているが，ステロイド以外の薬剤の骨代謝への影響にはまとまったガイドラインはない。高齢者の健康寿命延伸をはかる上で，他疾患の薬剤からの骨への作用は無視し得ない検討課題となってきている。

理解を助けるトレーニング問題

骨粗鬆症の薬物治療について山内美香 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1373-1373

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（2015年９月号特集：「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」をめぐってに関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

連載　歯科および顎口腔疾患と骨カルシウム代謝（２）

破骨細胞による骨破壊性骨吸収と口腔疾患中村美どり , 小出雅則 , 中村浩志 , 宇田川信之 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1376-1384

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　破骨細胞は単球・マクロファージを起源とする生体内で唯一骨吸収能を有する細胞である。破骨細胞が歯を支えている歯槽骨を破壊する疾患が歯周病である。歯周疾患による歯の喪失の回復には，義歯やブリッジの他，喪失部位にチタン製の口腔インプラントを植立し，咀嚼を回復する治療が標準的治療方法として確立されてきた。しかし，インプラント周囲炎の発症がインプラント治療の予後を脅かしている。破骨細胞による骨吸収を抑制するビスホスホネートの投与が原因の一つと考えられている顎骨骨髄炎（顎骨壊死）の発症も口腔疾患として大きな問題となっており，その病因解析と治療方針の確立が急務である。

連載　注目の海外文献（41）

１．マルファン症候群患者由来のiPS細胞の表現型を忠実に再現したヒトES細胞における骨形成能２．マルファン症候群患児の筋と骨の異常：年齢とFBN1の遺伝子型の関連性３．マルファン症候群の患児と青年の骨密度：発展的問題へのエビデンス須田直人 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1386-1388

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Lineup １．マルファン症候群患者由来のiPS細胞の表現型を忠実に再現したヒトES細胞における骨形成能２．マルファン症候群患児の筋と骨の異常：年齢とFBN1の遺伝子型の関連性３．マルファン症候群の患児と青年の骨密度：発展的問題へのエビデンス

１．低酸素状態で癌から分泌されるリシルオキシダーゼは骨転移巣を誘導する２．Dap12とαvβ3インテグリンの欠損は重篤な大理石骨病を発症させる３．Snx10欠損で生じる大理石骨病性クル病は，破骨細胞の骨吸収不全と胃酸分泌不全によるカルシウム吸収障害に起因する小林泰浩 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1388-1390

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Lineup １．低酸素状態で癌から分泌されるリシルオキシダーゼは骨転移巣を誘導する２．Dap12とαvβ3インテグリンの欠損は重篤な大理石骨病を発症させる３．Snx10欠損で生じる大理石骨病性クル病は，破骨細胞の骨吸収不全と胃酸分泌不全によるカルシウム吸収障害に起因する

バックナンバー 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1413-1417

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特集予告（10月号，11月号） 25巻9号 , 2015年8月 , pp.1419-1419

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
25巻9号
(2015年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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第10位１．EphB4は骨折治癒過程の軟骨内骨化を促進しリモデリングを抑制する　２．骨芽細胞でephrinB2/EphB4を阻害すると，副甲状腺（PTH）の骨同化作用が現れない　３．ephrinB2刺激は頭蓋骨の形成を促進する松尾光一 CLINICAL CALCIUM 23巻 7号 pp. 1055-1057 (2013年6月28日) 医薬ジャーナル社

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