Neurological Surgery 脳神経外科 45巻7号 (2017年7月)

  • 文献概要を表示

 昨年から,愛媛でお世話になっております.住み慣れた関西圏から離れ,これまであまり縁がなかった地域に引っ越しましたが,生活面で変わることはありません.また,外来・病棟・手術と診療面においても,大きく変わることはありませんでした.一番大きな変化は,現職になって医学生と接する機会が増えたということです.特に,病院実習では,5年生の6人が1グループとなって,脳神経外科で2週間過ごします.この実習に際しては,試験のための知識や座学で学べる以上のことを学んでほしいと考えています.そのため,カンファレンスでは,専門研修医や若手スタッフが担当患者のプレゼンテーションを提示した後に,学生に強制的に質問を考えてもらっています.そうすることで,学生側はチーム医療の重要な局面であるカンファレンスに積極的に参加する体験を得ると同時に,指導する側は,学生が症例について何を学び,何がわかっていないかを知ることができます.また,脳神経外科医がどのように考えて,なぜそのような治療方針になるかを理解してもらうには絶好の機会ですので,頭を使ってもらいたいのです.

 さらに,学生と若いスタッフを交えて,1時間ほどコーヒーを飲みながら話をする機会を2週間の間に持つようにしています.これは,われわれ脳神経外科医にとって,学生の将来の希望や不安を知ることができるよい機会だと感じています.学生が自分のキャリアを考える際のアドバイスになるようにしていますが,そんなやり取りの中で気付いたことがいくつかあります.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 胃運動は胃壁内に存在する神経叢によって調節されるとともに,中枢神経から交感神経系,副交感神経系を介する二重支配も受けている18,22,24).したがって,中枢神経疾患では胃運動障害の合併が予測される.脳梗塞患者における嚥下障害,消化管運動障害,消化管出血などの消化管障害はよく知られており,慢性期の脳梗塞患者では嚥下障害と胃の運動異常が認められると報告されている3,4).胃運動や電気的活動は自律神経により調節されているため,脳梗塞の中でも脳幹梗塞において障害の程度が強くなることが推測される15,18,22,24).しかし,急性期の脳梗塞患者の胃運動について脳幹梗塞と脳幹以外の梗塞とを比較検討した報告はない.

 胃運動の評価法としては内圧測定,シンチグラフィー,アセトアミノフェン法,呼気試験,造影剤含有カプセル法などが報告されているが,簡便で侵襲のない方法として胃電図がある13,15.17)

 今回われわれは,急性期脳梗塞患者の胃運動障害を予測することを目的として胃電図を記録し,脳幹梗塞例と脳幹以外の梗塞例について比較検討したので,若干の考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 頭蓋内硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)は頭蓋内血管奇形の10〜15%を占める稀な疾患であり1,8,11),テント部dAVFは桑山ら10)の報告で頭蓋内dAVFの3.2%,海外の報告1)でも8.4%にすぎない.これらの報告では,同部位のdAVFは高率に出血,静脈性梗塞などを呈する(頻度はそれぞれ67.7%10),96.9%1))とされ,積極的治療を要する.この部位のdAVFは静脈洞を介さずに直接静脈に流出することが多く,古くから開頭による流出静脈離断が確実な治療として報告されている5,12,18).近年では液体塞栓物質を用いた経動脈的塞栓術(transarterial embolization:TAE)の報告が散見され,比較的高い閉塞率が報告されている6,8,9,14,16,20).一方,経静脈的塞栓術(transvenous embolization:TVE)による治療は難しく,報告も少ない.今回われわれは,non-sinus typeテント部dAVFに対し,流出静脈を介したTVEを行うことで根治し得た症例を経験した.これまでにnon-sinus type dAVFに対する流出静脈を介したTVEの報告は数編が散見される程度4,17,20)であり,その適応は限定的である.われわれは,流出静脈のシャントに近い部分に細径コイルを密に留置するために,ダブルカテーテル法を用いて流出路にアンカーコイルを留置する工夫を行うことで,確実な治療を行い得たのでその有用性を報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)に対する脳血管内治療としては,経動脈的塞栓術(transarterial embolization:TAE),経静脈的塞栓術(transvenous embolization:TVE)がある.Multiple shunt, small shuntやtortuous feederを有するようなdAVFに対しては,TAEはfeeder occlusionに終わることが多く,根治性は低い9,10,12,14).このような症例や,retrograde leptomeningeal and cortical venous drainageを呈する症例では,TVEでshuntのすぐ下流をコイルで塞栓し,罹患静脈洞をsinus packingすることで,根治が得られる3,8,13).また,isolated sinusや,罹患静脈洞の近位部が閉塞しているような症例では,カテーテルによるアプローチが困難なことも多く,小開頭による罹患静脈洞直接穿刺(direct puncture)など,アプローチ方法を工夫する必要がある10)

 今回われわれは,経大腿静脈アプローチでは罹患静脈洞への到達が困難であったため,indocyanine green(ICG)videoangiographyで上矢状静脈洞(superior sagittal sinus:SSS)を同定し,direct punctureすることで血管内治療を行った症例を経験したので,報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 バイパスを利用した脳動脈瘤治療のためには,balloon occlusion test(BOT)などで脳虚血に対する耐性を術前に評価することが重要であるが,くも膜下出血急性期に神経症候を評価する通常のBOTを行うことは困難である.いわゆるblister-like内頚動脈瘤でも破裂急性期はBOTが省略され,スパズム予防や穿通枝への血流確保の観点からhigh flow bypass術を行い内頚動脈をトラッピングする処置が,目指される治療法の1つとなっている.X-ray angiography perfusion(XAP)analysisは診断digital subtraction angiography(DSA)の際にその場で施行することができる簡易的な脳血流検査である.Asaiらは21例の未破裂動脈瘤のBOTの際にXAP analysisを施行し,mean stump pressure(MSTP)との有意な正の関係性があることを報告しており,米国神経放射線学会(ASNR),放射線医学血管内治療学会(SIR),脳神経血管内治療学会(SNIS)による頭頚部DSAガイドラインにも引用されている2,9).本報告ではこの手法を利用して閉塞試験を施行したblister-like破裂内頚動脈瘤の2症例を紹介し,XAP analysisが適切なバイパス法の選択に有用であることを報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 深部脳静脈洞血栓症(deep cerebral venous sinus thrombosis:DCVST)の中には,出血性脳梗塞(hemorrhagic infarction:HI)を含めた遅発性脳出血を伴う例が9%含まれているという報告がある10).本邦の脳卒中治療ガイドライン2015では,頭蓋内出血を伴う例でもヘパリンの使用を考慮してもよいとされている8).しかし,そのような症例でヘパリンの使用を継続することで出血の拡大や死亡率の上昇を来す恐れがあることは否定できない.今回われわれは,ヘパリン,ワルファリンを用いた抗凝固療法中に遅発性にHIを合併した症例に対し,エドキサバンに変更することで症状の増悪や出血の拡大なくDCVSTの部分再開通を認めた症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 血管芽腫はWHO分類grade Ⅰの良性腫瘍であり,全頭蓋内腫瘍の1.5〜2.5%の発生頻度で,発生部位は小脳76%,大脳半球9%,脊髄7%,脳幹近傍5%と報告されている5).小脳に発生するものが最も多く,全小脳腫瘍の10%を占める.血管芽腫は囊胞性(cystic type),および充実性(solid type)に分類され,充実性が約30%,囊胞性が約70%を占める12).治療は全摘出が主軸となるが,脳動静脈奇形のごとく発達した血管があり,腫瘍に切り込むと大量の出血に難渋することになり,栄養動脈の処理と,周囲からの剝離による一塊摘出が原則である.ただし,手術に伴うリスクは,発生部位,充実性か囊胞性か,などにより異なる.特に,充実性小脳血管芽腫は囊胞性のものと比しhypervascularであること,また減圧のスペースの確保が困難であることから,摘出術の難度は高い9).近年,髄膜腫など腫瘍血管の発達した頭蓋内腫瘍に対する術前塞栓術の有用性が報告されている11).一方,血管芽腫の術前塞栓術の報告は散見されるものの,その有用性は議論の余地がある.今回われわれは,充実性小脳血管芽腫の2例に対し,開頭腫瘍摘出術同日に液状塞栓物質n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による術前塞栓術を行い,手術摘出の確実性と安全性に有用であったと考えられたので,文献的考察を加え報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 脊索腫(chordoma)は胎生期の脊索の遺残から発生する稀な腫瘍であり,脊索の存在した頭蓋底から仙骨までに発生する3,4,6-8).頭蓋底では鞍背から斜台,大後頭孔に好発すると言われている.一般的に脊索腫は骨内部から発生し,骨を破壊して発育する硬膜外病変であることが多いが,今回われわれは硬膜下を主座とし,斜台と連続性をもたないintradural retroclival chordomaの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(internal carotid-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC AN)に合併する同側動眼神経麻痺(oculomotor nerve palsy:ONP)は,切迫破裂の警告症状やくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に伴う局所神経症状として広く認知されているが,対側に生じることは極めて稀である19).今回われわれは,SAH発症約1日後に対側ONPを発症したIC-PC ANの稀な1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.経験症例

 特記すべき既往のない45歳女性.買い物中に突然の頭痛と嘔吐を発症し,当院へ救急搬送された.来院時の意識レベルはJCS Ⅰ-1,GCS E4V4M6,そのほかの神経学的脱落症状は認められなかった.頭部CTにて左小脳延髄槽(cerebellomedullary cistern)に限局した高吸収域を認め(Fig.1A-C),Hunt & Kosnik Grade 2,WFNS Grade 2のくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)と診断された.血管造影検査にて,血腫の分布と一致した左椎骨動脈-後下小脳動脈分岐部(vertebral artery-posterior inferior cerebellar artery:VA-PICA)に径2mmの動脈瘤を認めた(Fig.1D).CT上の血腫の分布が動脈瘤周囲に限局されていることから,本VA-PICA動脈瘤が出血源であると考え,発症2日目に左後頭下開頭transcondylar fossa approachにて動脈瘤頚部クリッピング術を施行した.術中所見では,左VA-PICA動脈瘤は確かに厚い血腫内に存在していたが,血腫は動脈瘤壁と癒着しておらず,また動脈瘤全周にわたり瘤壁が破綻した所見もみられず,未破裂脳動脈瘤であった(Fig.1E).そこで同動脈瘤をクリップにて閉鎖した後,後頭蓋窩の血腫を徹底的に除去しながらそのほかの出血源がないかを検索したところ,Meckel腔下方の錐体骨硬膜に壁の薄い小さな静脈瘤(Fig.1F)を認め,血腫との癒着が認められた.静脈瘤からは拡張した硬膜内の静脈が海綿静脈洞方向へと流出していた.Indocyanine green(ICG)血管造影を行うと,この静脈瘤は通常の静脈相よりも早期に描出され(Fig.1G),硬膜内にarteriovenous(AV)shuntとdraining veinを有する硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)を疑う所見であり,亢進した硬膜内静脈圧の影響で硬膜表面に静脈瘤を生じ,これが出血してcerebellomedullary cisternに限局したSAHを呈したと考えられた.術中に静脈瘤と近傍の硬膜を広く凝固し(Fig.1H),ICGでAV shuntの消失を確認した.

 術後にもう一度術前の血管造影検査を見直したが,やはり明らかなAV shuntそのものを錐体骨部に指摘することはできなかった.しかし左上眼静脈の拡張が認められた(Fig.2A).術後はこの上眼静脈拡張の消失が確認されたため(Fig.2B),petrous dAVFからの海綿静脈洞への逆流と静脈圧の亢進が生じていたものと推察された.またVA-PICA動脈瘤も消失した.術後経過は良好であり,神経学的異常もなく発症13日目に独歩にて自宅退院となった.

連載 脳腫瘍の手術のための術前・術中支援

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 大後頭孔部に発生する腫瘍は髄膜腫が最も多く,頭蓋頚椎移行部に発生する良性髄外腫瘍の60〜77%を占める1,11,18-20,30).大後頭孔部髄膜腫は全髄膜腫の0.3〜3.2%,後頭蓋窩髄膜腫の4.2〜20%を占め,68〜98%は腹側面から発生する11,12,18,20,23).大後頭孔腹側部髄膜腫に対しては背側から到達するposterior approach,外側から到達するlateral approach,腹側から到達するanterior transoral approachがあるが,midline posterior approachでは延髄や上位頚髄越しの手術となり,anterior transoral approachでは,術後の髄液漏や髄膜炎が危惧されるため,われわれは外側からのアプローチを用いている.本稿では,頭蓋頚椎移行部の外側からの解剖と,大後頭孔腹側面に発生した髄膜腫の摘出術の実際について解説する.

  • 文献概要を表示

 貴誌に掲載されました浜田さおり先生らの症例報告「ガンマナイフ照射11年後に出血を来した脳動静脈奇形の1例—免疫染色による再開通現象の検討—」1)を興味深く拝読しました.私は約30例の同様の合併症への手術経験から,その発生機序に関して報告してきました3,4).浜田先生らがFig.3において示した囊胞に接する造影効果を呈する病変は本病態の本質ではありますがnidusの一部ではなく,遅発性合併症として脳実質内に生じた内皮損傷を伴う拡張毛細血管の集簇であり,術中に赤い結節性病変として確認できます3,4).浜田先生らの例は,ガンマナイフ照射後に生じた内部に出血を伴う遅発性囊胞形成として捉えるべきものです.Fig.4に示される血管は微細でMRI上の結節性増強効果と一致するとは考えにくく,血管撮影でnidusや導出静脈が描出されないことからも再開通が病態の主体とも考えにくく,再開通と囊胞形成の関連も不明です.定位照射後のAVM再開通における血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells:EPCs)関与の可能性は否定できませんが,再開通と囊胞形成は分けて論ずべきと考えます.本例における囊胞形成や囊胞内出血は,機能不全を伴った血管内皮からの蛋白漏出や出血がその本態で,AVMに特異的な合併症ではなく,実際に転移性脳腫瘍や聴神経腫瘍でも同様の報告があります2,5)

--------------------

欧文目次

お知らせ

略語および度量衡単位について

次号予告

編集後記 宮本 享
  • 文献概要を表示

 本号にもさまざまなテーマの論文が掲載されている.連載「脳腫瘍の手術のための術前・術中支援」では,鰐渕昌彦先生から大孔付近の外科解剖と手術アプローチについてわかりやすく解説していただいた.

 杵川論文は内科(消化器)からのユニークな内容の投稿で,脳幹梗塞で胃運動が低下することが示されている.山川論文はスタンダードには開頭手術,最近では経動脈塞栓が用いられることの多いtentorial dural AVFに対する経静脈塞栓の症例報告である.松崎論文はdural AVF治療で上矢状静脈洞を直接穿刺する際のICGの有用性を報告している.谷論文はblister-like ICA aneurysmに対するアシストバイパスの選択に簡便なX-ray angiography perfusion analysisを用いることを報告している.雨宮論文は出血性変化を呈した深部静脈血栓症に対するエドキサバンの使用経験の報告である.桑原論文は小脳血管芽腫摘出術当日に術前塞栓を行った報告である.その他にも興味ある症例報告が掲載されている.

基本情報

03012603.45.7.jpg
Neurological Surgery 脳神経外科
45巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月10日~6月16日
)