Neurological Surgery 脳神経外科 45巻8号 (2017年8月)

脳と人工知能 鈴木 一郎
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 今から50年前の1967年12月2日,それは日曜の昼下がり,南アフリカ・ケープタウンの病院に飲酒運転の車にひかれた25歳の女性が運ばれてきた.脳の損傷が激しく,数時間後に担当医は「救命困難」と判断したが,彼女の心臓は動き続けていた.翌3日,「脳死」と診断され,彼女の心臓は53歳の男性に提供されることになる.彼女の名はDenise Darvall,世界で最初の脳死下での臓器提供者である.ただ,彼女自身はその事実を知る由もない.

 それから50年経った現在,世界では年間に4,500〜5,000例の心臓移植が行われている.日本では1997年に「臓器移植法」が施行されたが,第1例目の脳死臓器提供が行われたのは2年後の1999年である.その後,本人の生前の同意を必須にしていたこともあり,臓器提供は年間7〜8例程度にとどまった.このため2010年に法改正が行われ,本人の意思が不明な場合は,家族の承諾でも臓器提供が可能になった.これ以降,脳死臓器提供件数は年間50例程度に増えた.

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Ⅰ.緒  言

 慢性硬膜下血腫は,臨床現場において最も頻繁に遭遇する頭蓋内疾患である.近年,この疾患の高齢者の割合が年々増加しており,手術の際には,高齢者が抱える全身性合併症が問題になってきている.慢性硬膜下血腫の初期治療としては穿頭血腫ドレナージ術が一般的であり,良好な治療成績が報告されている.しかし,再発率は10〜20%と比較的高率であり8),穿頭血腫ドレナージ術に対して難治性を示す症例も散見される1,3,7,9,10,12).過去の報告によると,上記手術に対して難治性を示す症例には,大開頭術など,さまざまな手術が施行されている4,5,14).今回われわれは,CT所見から多房性慢性硬膜下血腫と診断し,穿頭血腫ドレナージ術のみでは治療困難と判断した症例に対して,硬性内視鏡を使用した血腫除去術を施行して,良好な経過を得た.その有用性について文献的考察を加え検討したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 頚部頚動脈瘤は,頭蓋外を含むすべての動脈瘤のうち,1%以下にみられる稀な疾患である5).症状,原因,病態は多彩であり,治療は外科手術,血管内治療,薬物療法から症例に応じて治療戦略を選択する必要がある.われわれが経験した頚部頚動脈瘤直達手術を行った9症例の臨床像を検討し,手術適応や方法と留意点について考察する.

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Ⅰ.はじめに

 低年齢の小児が転倒して,手に持っていた歯ブラシ,玩具,箸,鉛筆などによって穿通性外傷を起こしやすいことはよく知られている.外傷部位により,歯科・口腔外科,耳鼻科,眼科,小児科を受診することが多い1)

 箸による眼窩や鼻,頬,頭蓋骨経由の頭蓋内への穿通の報告例は,食文化からアジア地域に散見されるものであり2,4,5,9),その奇異な外表所見から報告例は多い.しかし,口腔内から頭蓋内への穿通性外傷の報告はごく稀であり,その画像診断や治療過程も周知されていない.なかでも,既に箸を抜去した状態で来院した例で,頭蓋内病変を予見し,対処することは困難である.今回われわれは,口腔経由で頭蓋内に箸が刺入した小児の1例を経験したので,報告する.

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Ⅰ.はじめに

 もやもや病の診断基準は満たさないが,もやもや様異常血管網を伴った中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)閉塞が存在する病態があり,aplastic or twig-like MCAとして報告されてきた.病態はいまだ不明な点が多いが,成人での出血発症が指摘されており,再出血予防が大きな課題となっている1,6,12,16).今回われわれは,twig-like MCAに合併した前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AChA)末梢部の破裂動脈瘤に対し,急性期にclipping術と浅側頭動脈(superficial temporal artery:STA)-MCA吻合術を一期的に施行し,術後5年を経過した現在も良好な経過を辿っている1例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 テント部硬膜動静脈瘻(dural areteriovenous fistula:dAVF)は,全dAVFのうち4.8%と非常に稀な疾患である8).しかし出血発症が多く,静脈梗塞や頭蓋内圧亢進症状などaggressive featureを呈するとされるため,積極的な治療を必要とする1,3,7,8,11-13).今回,小脳出血で発症したテント部dAVFに対して,n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)を塞栓物質とした経動脈的塞栓術(transarterial embolization:TAE)によるflow reductionを行った後,NBCAによる経静脈的塞栓術(transvenous embolization:TVE)でシャントの消失を得た症例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 毛様性星細胞腫(pilocytic astrocytoma:PA)は,小児から若年者の小脳半球に好発し,境界明瞭な囊胞性腫瘤を形成する星細胞系腫瘍である15).今回,脳ドックで発見されたものの無症候性病変であったため経過観察となり,発見から約14年後に記銘力低下を来し,手術に至った後期高齢者PAの1例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA)に発生する動脈瘤は全脳動脈瘤の0.5〜3.0%程度で,その多くは椎骨動脈(vertebral artery:VA)-PICA分岐部に発生し,PICA末梢部動脈瘤は全PICA動脈瘤の15〜30%とされ,比較的稀なものと認識されている13,14,21).さらに,頭蓋外に発生したものとなると,文献上散見する程度である.今回われわれは,頭蓋外に発生したPICA末梢部動脈瘤に対して直達術を行い,良好な経過を得た症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

連載 脳神経外科診療に役立つPETによる診断法【新連載】

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Ⅰ.はじめに

 ポジトロン放出核種を使った生体の断層撮像(positron emission tomography:PET)における技術開発は,放射性同位元素の製造と標識合成技術,放射線計測技術や画像再構成法,さらに高度な画像解析法の開発などの,多分野の研究者と医学者との協力のもとに実用化がなされてきた.PETは,現在の多様な医療の中で,不可欠な診断技術と位置付けられており,分野横断的なコラボレーションに支えられながら,さらなる技術革新が進んでいるところである.本稿では,PETを使った種々の脳機能画像がどのように開発されてきたかを振り返り,そこからPETの新たな可能性を探るとともに,今後のあり方についても言及したい.

連載 脳腫瘍の手術のための術前・術中支援

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Ⅰ.はじめに

 本稿では,脳幹腫瘍の手術として比較的頻度の高い脳幹部海綿状血管腫について述べる.摘出の工夫として,画像所見,神経所見の判断,ナビゲーションシステムと術中電気生理モニタリングの活用,再発と再手術の考え方について述べる.

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次号予告

編集後記 飯原 弘二
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 酷暑の中,九州では昨年の熊本地震の爪あとが残る中で,九州北部が豪雨災害に見舞われ,多くの人命が失われました.被災し,今なお避難生活をされている方も多く,一刻も早く日常生活を取り戻されることをお祈りしています.

 本号の扉では,日本赤十字社医療センターの鈴木一郎先生が,「脳と人工知能」という題で,現在最もホットなトピックスである人工知能の医療への応用について熱い期待を述べられている.米国では,放射線医学関係の学会の演題はAI一色と聞く.脳神経外科の分野でも,近い将来に劇的な変化がもたらされるであろう.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
45巻8号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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