Neurological Surgery 脳神経外科 42巻10号 (2014年10月)

脇道の勧め 三原 千惠
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 この度,「扉」の寄稿を依頼され,大変光栄に思うと同時に「なぜ私?」という不安に駆られた.地方の女子大学(しかも医学部以外)に勤務している脳神経外科女医では力不足ではないだろうか,いや「扉」も私なんかに声掛けされたということはそろそろ人材不足なのかな?(失礼!),脳神経外科女医会の副代表だから女性の社会進出について一言?(いやいや代表の加藤庸子先生がおられるぞ),脳神経外科同時通訳団の数少ない女性だから?(これまたもっと英語の上手な女医さんがおられるぞ),まさか脳神経外科医にめずらしい労働衛生コンサルタント資格があるから?(脳神経外科医で資格を持っている人は少ないからこれかな?)と乏しい略歴の中から理由を探したが,やはりわからない.最終的に,大した経歴もない平凡な女医でも曲がりなりに「教授職」を得たということで,若い方々への何らかのエンカレッジになるのだろうと納得した.

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Ⅰ.はじめに

 「ユビキチン・プロテアソーム系」という言葉を聞いて,ピンとくる方は,基礎研究から離れた臨床医の先生方には非常に少ないと思われる.それでは,ユビキチン・プロテアソーム系とは,基礎研究と関わりのない多くの臨床医・脳神経外科医にとっては,まったく関係ない別世界の話であろうか?

 本稿では,脳神経外科医の頭の片隅に少しでも残していただきたい脳神経外科分野に関連したユビキチン・プロテアソーム系,さらにそれらの先にあるタンパク質の臨床応用への方向性についてまとめた.

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Ⅰ.はじめに

 蝶形骨縁内側部から鞍結節部に硬膜付着部をもつ髄膜腫,視神経交叉直下に主座をもつ頭蓋咽頭腫や下垂体腺腫,さらには海綿静脈洞から眼窩先端部に存在する腫瘍などのいわゆる傍鞍部脳腫瘍に対して腫瘍摘出術を施行する際,特に配慮すべき重要な解剖学的構造物には内頚動脈,中大脳動脈,前大脳動脈,視神経,視神経交叉と下垂体茎などがある.傍鞍部脳腫瘍は基本的に良性腫瘍が多いが,腫瘍の再発と再増大には腫瘍摘出率が関連していることから,患者の生命機能予後を最大限に維持しつつ可及的に腫瘍摘出率を向上させることが本病変に対する外科的治療の主眼である.その際,特に視機能に対する機能予後を改善することが重要である.

 手術の際には,正確なオリエンテーションの下,早期に視神経の位置を同定し,視神経管を開放し,視神経を減圧しておくことが重要である.このためには前床突起削除が有用である.前床突起を削除し,場合によってはfalciform ligamentやdistal dural ringを切開することで視神経と内頚動脈の可動性を得ることにより,optic-carotid triangle(OCT)の術野面積を広く確保することが可能となる.屍体脳を用いた検討では,OCTの面積は前床突起を削除しない場合に比べて4倍もの術野面積を確保できると報告されている11,22).それにより,視神経交叉直下や脚間槽へアプローチする場合,術野を十分に確保することが可能となり,腫瘍摘出における周辺構造物との剝離の際に,視神経損傷や動脈損傷(特に穿通枝損傷),ひいては下垂体茎や視床下部の損傷を軽減させつつ腫瘍摘出を図ることが可能となる.

 前床突起削除法には硬膜内から削除する方法27)と硬膜外から削除する方法4,5,7-10,18,21,29)がある.硬膜外からの前床突起削除法は,Dolenc7)が世界に先がけて報告し,脳底動脈瘤の処理や,下垂体病変の摘出にも応用されている8-10).Yonekawaら29)は鞍上部・傍鞍部腫瘍に対して選択的硬膜外前床突起削除法の有用性を報告しており,前床突起髄膜腫18),鞍結節部髄膜腫25)などの摘出において視機能温存と腫瘍摘出率の向上に有用であったと報告している.一方,DayらはDolenc法の変法として側頭葉固有硬膜を海綿静脈洞外側壁から剝離することによって前床突起を硬膜外に露出した後に削除し,さらに小脳テントを切開して側頭葉を硬膜ごと後方に移動することによって,開放された海綿静脈洞越しに内頚動脈後方から脚間槽にまでアプローチする方法をextradural temporopolar approach(EDTPA)として報告している4,5).今回われわれは,傍鞍部腫瘍に対するEDTPAによる前床突起削除法を用いた腫瘍摘出術の実際と治療成績を提示し,その有用性について文献的考察を加えて検討する.

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Ⅰ.はじめに

 内頚動脈-前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AChA)分岐部脳動脈瘤(AChA動脈瘤)は頭蓋内脳動脈瘤の2〜5%とされ1)高頻度に発生する脳動脈瘤ではないが,AChAの支配領域が内包後脚を含む重要部位であるために,その血流障害は重篤な神経症状をもたらすことが多い.そのためAChA動脈瘤の治療においてはAChAの温存に注意が払われてきたが,最近の報告でも外科的治療後にAChA領域の梗塞を12〜22.6%に起こすとされ1-3,9),他部位の脳動脈瘤治療と比較して術後脳梗塞の頻度が高い.今回われわれはAChA動脈瘤の治療症例を検討して,治療方法とAChA領域の虚血合併症についての問題点を検討し報告した.

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Ⅰ.はじめに

 テント上dermoid cystは,小児において遭遇する頻度が比較的低い占拠性病変の1つである6,12).しばしばdermal sinusに合併して後頭蓋窩や正中部に同定されることが一般的で,悪性組織ではないものの内容物の分泌に伴って緩徐に増大し症状を来す2,5).一方,さまざまな放射線学的特徴を有しており,術前検査のみで本疾患を疑うことは容易とは言えない6,8).Schneiderらによる過去の報告例の検討では,小児におけるテント上dermoid cystは多くの場合,前頭蓋底や鶏冠といった正中部に局在していることが多く,外側部におけるケースは1例のみしか報告されていない12).今回われわれは,右シルビウス裂内に占拠性病変を認め,摘出後にdermoid cystの診断が得られた小児例を経験したので報告する.過去の症例と同様に,本症例のMRI画像も特異的でなく,術前診断に難渋した.症例提示とともに,過去に報告された小児シルビウス裂内dermoid cystとの比較・考察を行う.

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Ⅰ.はじめに

 頭蓋底陥入症は大孔周囲構造が後頭蓋窩に陥入する機序により,直接の脳幹圧迫,もしくは脊髄空洞症を伴って症状が発現する.治療には前方圧迫要素である歯状突起の削除,併存するChiari奇形に対する大孔減圧術,不安定要素の解除を目的とした後頭骨・頚椎固定などが病態を考慮した上で選択されるが,どの要素が主たる病態なのかは確定困難であることも多く,疾患の稀少性も相まって病態診断から治療選択まで難渋することがある.今回われわれは若年男性の頭蓋底陥入症が,軽微外傷を機に脊髄空洞症の悪化を来して症状を発現し,苦慮しつつ診断・治療を行った症例を経験した.その病態診断・外科的治療に至る経緯について文献的考察を加え報告する.

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Ⅰ.はじめに

 異所性左鎖骨下動脈は,多くの例で右側大動脈弓に合併する稀な破格である.今回,この破格に合併した左鎖骨下動脈狭窄および左頚動脈狭窄に対して経皮的血管形成術を同時に施行した例を経験した.異所性左鎖骨下動脈に対する血管内治療の報告は,われわれが過去の報告を渉猟し得た限りではほとんどない.若干の文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 下垂体へ転移を来す転移性脳腫瘍の報告は散見されるが,頭蓋外腫瘍が下垂体腺腫内に転移を来した症例は非常に稀であり,われわれが渉猟し得た限りでは自験例を含めて20例のみである.転移性下垂体腫瘍と下垂体腺腫内転移は発症様式が大きく異なる.今回われわれは既存の下垂体腺腫に肺癌が転移した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 前脈絡叢動脈に発生する脳動脈瘤は通常,内頚動脈との分岐部に発生し脳動脈瘤全体の5%以下の頻度である5,16,28).特に前脈絡叢動脈末梢部に発生する脳動脈瘤は非常に稀であり,治療時期や方法は定まっていない4,10,21,27).今回われわれは,中大脳動脈起始部の動脈硬化性閉塞に起因した前脈絡叢動脈末梢部に発生した破裂脳動脈瘤が短期間に増大し,血管内塞栓術で根治を得た1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 周産期脳出血は妊産婦死亡の16%を占め,産科的出血に次いで高い死因である3).周産期脳出血は妊娠32週以前に起こりやすく,その原因のうちもやもや病は10.3%を占める14).一方,遠位部前脈絡叢動脈瘤は稀な動脈瘤で,もやもや病に合併した報告が多い5)

 今回,妊娠24週に脳内出血を発症し,片側型もやもや病と診断され,出血源が遠位部前脈絡叢動脈瘤であった1例を経験したので報告する.

連載 脳卒中専門医に必要な基本的知識

(3)脳梗塞急性期治療 山上 宏
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Ⅰ.はじめに

 脳梗塞急性期の治療目的として,①閉塞血管の再灌流や脳保護薬を用いて虚血による神経細胞死を阻止すること,②抗血栓療法やリスク管理により虚血病変の拡大や早期の再発を防ぐこと,の2つが柱となる.これまでに多くの研究が行われてきたが,現時点で高いエビデンスが確立している治療法は,アルテプラーゼ静注療法とアスピリンによる抗血小板療法のみである.これは,脳神経細胞が虚血に対して極めて脆弱であること,脳梗塞の病態が多様であること,脳が出血性合併症を来しやすい組織であること,などが原因と考えられる.

 本稿では,これまでのエビデンスに基づく脳梗塞急性期治療の基本的知識を紹介するとともに,今後の展望についても述べる.

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次号予告

編集後記 片山 容一
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 この号にも,読み応えのある論説や論文が多数掲載されている.著者の方々に心から御礼を申し上げたい.

 巻頭の「扉」では,三原千惠教授が管理栄養士の育成に情熱を燃やしていることを述べておられる.その意気込みに感嘆しつつ,「そう言えば…」と思い当たった.わが国では,脳神経外科の専門医資格を取得しているのに,他分野の教授に就任して,それぞれ大成しておられる方々に出会うことがよくある.それも1人や2人ではない.すぐ思いつくだけでも20人は超える.こんな国はめずらしいのではないか.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
42巻10号 (2014年10月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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